飲食店で働き始めると、自分が勤める店舗が他の店舗と比べてどう違うのか、どう優れているかを今までとは違う目線で比較するようになると思います。
多くの人が注目するのは価格でしょう。例えばビール、おつまみ、デザート類などは、原材料はそれほど違わないはずなのに、お店ごとに表示価格が異なることがままあります。
しかも、これらは疑問に思ったときに店主に尋ねても、企業秘密なためかはぐらかされることが多いです。真の答えにたどり着くためには、時間も労力も要しますので、簡単なことではありません。
今回は巷でたまに見かけるビール100円の激安居酒屋に注目。気になるその儲けのからくりを分かりやすくお伝えいたします。
ビール100円の居酒屋は赤字?
ビールの価格設定は基本的に自由です。仮にあなたが明日から居酒屋を起業したとしましょう。集客のためにビールを100円で提供しても問題にはなりません。極端に言えば、1円でも1000円でもOKです。
しかし、実際に恒常的にビールを1円で提供しているお店を私は聞いたことがありません。これは至極当然で、原価よりも大幅にビールを安く提供すると全体の利益率が下がってしまうからです。
ビール100円の居酒屋も、赤字経営ではお店が潰れてしまいますから、当然利益を生み出せるようなシステムになっています。従って、ビール100円は黒字経営のための戦略ということになります。
原価を考える
生ビール1杯あたりの原価は150~200円と言われています。仮に生ビールだけを100円で売り続けると、お店はあっという間に潰れてしまいます。しかし、他のメニューの価格を原価より高く設定するとどうでしょう。
原価ですが、サワ―は1杯30円、ハイボールでも1杯70円です。焼き鳥でいえば、モモやささみで1本40円、鳥皮は1本10円です。このように同じようなメニューでも、実は1品1品の原価はまったく違うので、これらを100~400円ほどに設定し、たくさん売ると大きな利益となります。
ビール100円のお店は他のメニューを原価より高く設定することで、利益を生み出しているのです。
人件費を考える
人に投資をする企業は伸びると言われますが、人件費そのものは飲食店にとって少なくない負担となりえます。
売上に対する人件費ですが、一般的に食堂やレストランやラーメン店は40%前後、すし店や日本料理店は30%前後と言われています。
飲食店によっては料理を簡素化することなどにより人件費を抑えています。
例えば煮込み料理は圧力鍋を使用する、仕込み済みですぐに出せる料理メニューを用意する、揚げるだけ、焼くだけ、盛り付けるだけなどのメニューを増やす。
こうすることで人件費を抑制し、価格を引き下げることができます。
賃料を考える
家賃もできるならば削りたい項目です。繁華街の一等地は賃料が高いですが、その分多くの集客が望めます。
ビール100円の居酒屋はよく見ると一等地は避けて出店しています。そして実は、繁華街の中でも、ビルの2階や3階などの上層階であれば賃料は低くなります。
立地が多少悪くても「ビール100円」という看板を目立つ場所に設置するなどすると、集客も望めるだろうという経営戦略なのです。
また、前の飲食店が使用していた物件をそのまま使用できる”居抜き物件”に入居し、リフォーム費用などを削っているお店もあります。
https://www.gourmetcaree.jp/kanto/
まとめ
ビール100円の実現の背景には緻密な経営戦略があることをお伝えしました。ビール100円に限らず、多くの飲食店は経営努力により、原価よりも安く料理等を提供し、お客様を喜ばせているものです。
大変ではありますが、品質と低価格の両立を追求することも、飲食店経営の面白さの一つです。