九州の食べんといかんばい~長崎編~ 「卓袱料理」
皆さんは、「卓袱(しっぽく)料理」をご存知ですか?長崎県で誕生した料理で、正確な発祥年は不明ですが、1761年には卓袱料理の記録が残っているため、約300年の歴史があると考えられています。
卓袱料理とは、和食・中華・洋食が融合した豪華なコース料理です。前菜からお椀もの、大鉢などの様々な料理が、大きな円卓に約15品ほど並べられます。鎖国時代、外国との接触が多かった長崎らしい料理で、日本の「和」、中華の「華」、オランダの「蘭」をとって、別名「和華蘭(わからん)料理」とも呼ばれています。当時の日本は、お膳に一人ずつの食事が用意されているのが一般的だったので、卓上に並んだいくつもの大皿を囲み、自由に食べるという外国スタイルの食事は大変珍しいものでした。
店により違いはありますが、卓袱料理にはちょっとしたマナーが。
円卓に料理が出揃っていても、勝手に食べ始めるのはマナー違反。女将さんの「御鰭(おひれ)をどうぞ」の一言が食事の合図です。
御鰭とは鯛の身が入ったお吸い物のことで、「お客様に対して鯛一匹を使うほど、おもてなしをします」という気持ちが込められています。
卓袱料理はこの御鰭から始まり、長崎でとれる新鮮な魚を使ったお造りや湯引き、前菜の三品盛、メインの豚の角煮など、たくさんの料理が続き、最後は梅椀(うめわん)で終わるのが一般的です。梅椀とは「おしるこ」のことで、当時貴重だった砂糖をふんだんに使っていることから、“最上級のおもてなし”が伝わります。
様々な食文化が融合している、長崎ならではの卓袱料理。現在でも、結婚披露宴などの冠婚葬祭によく食べられています。昔も今も、“お客様をおもてなしする”という気持ちは変わっていない伝統料理なのです。