あんこを使った和菓子、「ぼたもち」と「おはぎ」は、同じ和菓子ですか?それとも違う和菓子ですか?いざ聞かれるとよく分からない…そんな違いについてご紹介します。
ぼたもち | おはぎ | |
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漢字 | 牡丹餅 | お萩 |
材料 | 小豆、水、塩、砂糖、もち米 | |
時期 | 牡丹の花が咲く、春のお彼岸の時期に食べるもの | 萩の花が咲く秋のお彼岸の時期に食べるもの |
あんこ | こしあん(収穫後、冬を越した小豆を材料にしていたため、硬くなった皮を取り除いてあんこを作っていたため) | つぶあん(小豆の収穫時期と重なっており、とれたての柔らかい小豆を使うことができ、皮ごと使ってあんこを作っていたため) |
形 | 牡丹の花に見たてて、やや大きめに作られる | 萩の花に見たてて小ぶり・長めに作られる |
上の表を見ていただくと、ぼたもちもおはぎも、基本的には同じものだということが分かります。違いは、食べる時期だけなんです!
>>>なぜお彼岸の時期に食べるのか?
この風習が生まれたのは江戸時代だと言われています。当時、庶民にとって砂糖は手の届かないものだったため、塩で味をつけた餡を使用していました。
小豆の赤い色には悪い気を払う効果があると信じられており、先祖の供養を行う際にお供えしたのが始まりだと伝えられています。それが次第にお彼岸や四十九日の忌明けに食べる風習へと変化・定着していきました。
>>>こしあんとつぶあんの違いはなぜ生まれたのか?
あんこの材料になる小豆は、秋に収穫時期を迎えます。収穫したばかりの小豆の皮は柔らかいため、皮ごとつぶしてつぶあんを作ることができます。よって、秋のお彼岸で使われるのはつぶあんなのです。では春のお彼岸はというと、収穫して時間の経過した小豆を使うことになります。越冬した小豆の皮は硬くなっているので、あんこを作るときに皮を取り除くのです。その結果、春のお彼岸ではこしあんが使われるようになったんですね。
とはいえ、現代では技術の発達によって春でも皮ごと使ったあんこを作れるようになりました。もともとは収穫時期によってつぶあんかこしあんか分かれていましたが、今はあまり関係なさそうです。
>>>実は他にも呼び名がある!
春は「ぼたもち」、秋は「おはぎ」と名前が分かれていますが、実は他にも呼び名があるってご存知ですか?
まず前提として、ぼたもち(おはぎ)は、餅のように杵と臼で搗いて作るわけではありません。つまり、作る過程で「ペッタン、ペッタン」と音がしないので、いつ搗いて(作って)いるのか周囲の人からは分からないということになります。これを元にして、言葉遊びをしていきます!
【夏】
いつ搗いたか分からない→搗き知らず→着き知らず(夜は真っ暗で、いつ船が岸についたのか分からない)→夜船
【冬】
いつ搗いたか分からない→搗き知らず→月知らず(北向きの窓からは月が見えない)→北窓
つまり、春は「ぼたもち」、夏は「夜船」、秋は「お萩」、冬は「北窓」と呼ぶんです。ひとつの和菓子を表すのに、季節にちなんだ4通りもの呼び名があるなんて、とても風情がありますよね。昔の人の粋な言葉遊びが垣間見えます。
>>>まとめ
現代では技術の発達などから「ぼたもち」と「おはぎ」の違いも曖昧になっていますが、昔は時期によって呼び名も違ったことが分かりました。
春のお彼岸は「春分の日」、秋のお彼岸は「秋分の日」を中日として前後3日間、計7日間が「お彼岸」の期間となります。ちなみに今年の秋のお彼岸は9月20日(金)から9月26日(木)です。令和になって初めての秋のお彼岸、今回ご紹介した違いを思い返しながら迎えてみてはいかがでしょうか。