うを佐 大阪駅を眼下に望み |
JR大阪駅のホームを眼下に望む、大阪ステーションビルの16階。今年で35年目を迎える同店は、なんとこのビルと同い年。数々の店舗が入れ替わる中、老舗として長く大阪の人々に愛されている。「百貨店の上階だけに、昼間は買物途中の女性客がメイン。夜はビジネスマンから接待客まで、幅広い客層の方に来ていただいています」と、この道20年以上の板前・三橋さんは言う。休み時間がないため、昼下がりに一人でふらりと立ち寄る常連客も多い。
看板料理は旬の魚介と寿司。取材当日の7月は、鱧や泳ぎ稚鮎、岩ガキなど夏の味覚がずらりと揃う。「島根県・隠岐の島の漁港とは20年来の付き合いがあり、岩ガキだけでなく泳ぎイカ、冬場はアコウやオコゼなどを送ってもらっています。イクラは北海道から直送。その他にも市場を通して全国各地の季節の魚が数多く届きます。」
自慢は素材だけではない。厨房に立つのは無論、寿司を握れる経験豊富な板さんばかり。それに加え一品料理は、煮炊き物・焼物・揚物など日本料理の技を駆使したメニューが多数。本格的な懐石料理を気軽なセットで味わえるランチも人気だ。「出汁は昆布と鰹で引き、寿司のシャリも自前で仕込みます。日本料理の仕事は仕込みが8〜9割。見えない裏方の作業が多いですが、当たり前のことをコツコツ続けることで、お客様が『美味しかった!』と言ってくださる。そのやりがいは語り尽くせません。」
未経験から入店した若手は、まずは包丁の使い方、出汁の引き方、シャリの炊き方といった基礎を覚える。「これらの技術を身に付けたら一生もの。例えばシャリ炊きは季節や米の状態によって水加減を変えるなど、地道な経験が必要です。習うより慣れろとはよく言ったもので、包丁研ぎや桂剥きなどの仕事は、とにかく体で覚えるしかありません。」向上心があれば、いくらでも学ぶことがあると三橋さん。昔は「見て覚えろ」の世界だったが、今は「やる気がある子にはなんぼでも教えますよ」と笑う。
お客様も2世代で通う方が増えた昨今、厨房でも次世代を引き継ぐ人材が欲しいところ。三橋さんのように10年、20年と長く働き続ける板さんが多いことは大きな強みだが、若手パワーの増強にも今後は力を入れていきたいと話す。「料理に対し、真剣に向き合う厨房内ですが、ピリッとした中にも和気あいあいとしたムードがあるのが自慢。料理長も明るくて親しみやすい方ですし、ガチガチに緊張して仕事をする雰囲気ではありません。未経験者でも、本気で日本料理を学びたい方は、最初の一歩としてぜひ当店の門を叩いてほしいですね。」
晴れてカウンターに立つ日を目指し、日々コツコツ。一流への道は、最初の一歩が肝心だ。
2018.8.30更新 取材・文/太田 裕子
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うを佐
大阪ステーションシティ
サウスゲートビル本店
電話/06-6344-0887
住所/大阪市北区梅田3-1-1 大阪ステーションシティ サウスゲートビルディング16F
営業/11:00~23:00(L.O.22:00)
定休日/不定休
交通/JR「大阪駅」直結