のんき亭 花街・祇園で43年 |
花街・祇園にて産声を上げて43年。ここ「のんき亭」は店主の相原さんが25才の時にオープンしたお店だ。「16才で日本料理の世界に入りました。独立した当初は3千円のコースを中心に懐石料理店としてスタート。この街は一度信用を得ると強い。おかげ様で長きに渡り良いお客様に恵まれて参りました。」
界隈には数百年の歴史を持つ老舗もひしめく。「京都の文化の中で一体何ができるのか?」と自問自答を繰り返し、伝統の中に革新のエッセンスを加えた料理で勝負。当時から和食以外の調理法にもどんどん挑戦し、自らが食べ歩いて美味しいと感じた料理は臆せず取り入れていったそう。
「人と同じ土俵で戦っても勝てません」と話す相原さん。斬新な料理はメディアにも取り上げられ、新しいもの好きの京都人の舌を魅了した。しかし斬新なだけではすぐに飽きられる。「やりすぎると何やらわからん店になる」と話す言葉の奥には、しっかりとした伝統の技と、「旬を生かす」という日本料理の心が息づいている。
中でも出汁は基本中の基本。昆布と鰹の伝統的な出汁をはじめ、野菜の出汁や焼き干しと丸鶏のスープなど、そのバリエーションは多数。シメに人気の「支那そば」は、青森で出会った鰯の丸干しに感銘を受け生み出した一品。ラーメンとは一味も二味も違う透き通った上品なスープは、「ここでしか味わえない」と常連客から絶大な支持を得ている。
常に時代の流れを読み、数々のアイデアを形にしてきた相原さん。だからこそ「43年やっていても、客層は常に変わらず30~40代の方々」だそう。よく食べ、よく飲む世代に愛される理由は、「ええものをボーンと出して満足してもらいたい。常に直球勝負です」という潔さ。上質な素材を惜しげなく使い、コース料理もボリューム満点。季節の一品料理もメニュー名を見ただけで内容をイメージできるよう、素材名と調理法を明確に記す。だからこそ、お客様の心に残る。
テイクアウトのメニューも興味深い。鯖寿司や巻き寿司など、京の定番のほかに「牛ヒレカツサンド」や「牛ヒレカツ巻き」など、若い世代への手土産に喜ばれる一品を用意。実は20年も前からの人気商品だそうで、「子供の頃に親が買ってきてくれたこのカツ巻きを食べて美味しかった!」と話す世代が、現在は顧客として通ってくれているそう。
そんな相原さんも現在68才。そろそろ次世代にバトンを渡す準備にも取り掛かっている。「この店は二代目となる息子に引き継ぐ用意をしています。私は料理を通してさまざまなお客様と巡り合い、とても幸せな人生だと思います。自分の感性を研ぎ澄ませ、料理を提供することでお客様に喜んで頂ける…料理人とは最高の仕事。加えて、日本には素晴らしい旬の食材とものづくりの文化が根付いています。若い方々には誇りを持ってこの世界に飛び込んでもらいたいですし、日本料理を武器に世界に飛び出して行ってもらいたいです。」
同店では現在、次世代を担うべく人材を募集している。文化と伝統、そこにアイデアと感性を加える相原さんの背中を間近で見ることは、大きな刺激になるだろう。この店で感性に磨きをかけ、温かいお客様に見守られて独立を果たす若者もいる。仕事の喜び、人生の楽しみを料理と共に謳歌できる職場だ。
2018.5.10更新 取材・文/太田 裕子
【オススメメニュー(税別)】 |
季節の一品料理各種500円、ふかひれ姿煮2,800円~、ふかひれ茶わん蒸し1,800円、支那そば1,000円、釜揚げしらす 焼めし800円、海老みそカレールゥ800円、老のXO醤 春雨炒め2,500円、かにクリームコロッケ800円、うどリブロース巻 たれ焼2,500円、黒酢すぶた ヒジキのソース1,800円、鯖ずし400円~、コース料理8,000円~ |
【SHOP DATA】
のんき亭
電話/075-525-2822
住所/京都市東山区花見小路新橋東入南側(橋本町405-1)
営業/17:30~翌1:00
定休日/不定休
交通/京阪本線「祇園四条駅」「三条駅」徒歩10分