外食はエンターテインメント 立地に左右されない “強い店”を作る ギャロ ガレージ オーナーシェフ 川添 義人さん(42才) |
ビルの入り口に、そのお店のはっきりとした看板は掲げられていない。「本当にここ?」という思いを持ちつつ、階段で3階まで上がる。工事現場か、あるいは地下のライブハウスかのような外観に不安はさらに高まりつつ、思い切って扉を開ける。そうしてたどり着くのが、こだわりの肉料理をアンティークを基調としたユニークな空間で楽しめる「ギャロ ガレージ」だ。
同店を含め、「ギャロ」ブランドで3店舗を神戸市内に展開するのが株式会社バンガロー。社長でありオーナーシェフの川添義人さんが追求するのは、通りがかりでふらりと立ち寄る店ではなく、「目的地としてわざわざ足を運んでもらえる店」だ。
「路面店で、気軽に入りやすい開放的な作りの方が集客は期待できます。でも、そのことと、リピーターを獲得して安定した経営ができるかは別問題。路面店には路面店の難しさがあるのです。それならば私たちは、集客こそ難しいものの、リピーターを高確率で獲得できる店にすることで経営を安定させようと考えたのです。立地に左右されない“強い店”とも言えますね。」
冒頭で紹介したような「入りにくさ」は、逆に言えば、「知っている人は知っている」という特別感につながる。外観と内観、空間のユニークさと料理の上質さといった“ギャップ”もまた、お客さんの心に残る印象を強くする。それらが相まって、「また来たくなる店」「人に紹介したくなる店」になっているのだ。
「外食は、非日常を楽しむエンターテインメントだと思っています。料理やサービスはもちろんのこと、お店を選んだり予約したりする段階から、どれだけワクワク感を高められるか。お店の中で、どれだけの驚きを提供できるか。そこを重視するのが、私たちなりの店作りです。」
強い店作りに邁進する川添さんには、忘れられない思い出がある。社員として飲食店で勤務していたころ、オーナーからお店の経営を任せてもらったのだ。「自信はあった」というが、結果は振るわず。そのお店は閉店することになり、川添さんは責任を取って会社を辞めようと考えた。ところが社長からは、「次の店を頼むよ」と言われたのだ。
「責任を取るとは、辞めることではなく挽回すること、結果を出すことだと教わりました。そこから先は無我夢中です。任された店を繁盛店にし、さらに次に任された店も軌道に乗せることができました。」
この過程で川添さんは、路面店ならではの利点と難しさを体験する。そこから、立地に負けない強い店作りという、川添さんならではのスタイルが磨かれていった。
斬新な外観や内装が注目されがちな川添さんの店作り・会社経営だが、この経験もあってか、実はどっしりと地に足を着けた揺るぎないものでもあるのだ。実際、川添さんは「夢という言葉はあまり好きじゃないです。夢よりも『目標』という言葉の方が具体性があって好きです」という一面も持つ。また、「失敗はもう経験したくない。出店したからには店を閉じたくない。だから計画はとても綿密です。細かい数字のことも徹底的に考えたうえで出店に踏み切ります」とも。
現在は神戸市内での店舗展開だが、関西各地、さらに東京や海外へも視線は向けられている。市場が大きくなればなるほど、ギャロ ガレージのような“とがった店”を受け入れ、楽しんでくれるコアなファン層も大きくなる。新たな挑戦がしやすくなるのだ。
「目標を持ち、そこを見つめてギラギラと目を光らせているような“肉食系”の人と一緒に仕事をしたいですね。私たちも負けないぐらいギラギラしているはず。一緒に目標を実現させていきましょう。」
2018.11.15更新 取材・文/ウィルベリーズ
【取材したお店】
GALLO GARAGE
電話/078-599-7088
住所/神戸市中央区北長挟通2-5-17 メープル三宮3F
営業/18:00~翌0:00(L.O.23:00)
定休日/不定休
交通/JR「三ノ宮駅」徒歩5分