関わるすべての人を幸せに 魅力ある飲食業界を築いていく 貝と白ワインのバル KAKIMARU 代表取締役 星山 真也さん(42才) |
10代の頃は生活の中心が音楽。「大したことはないですよ」と星山さんは謙遜するが、小学生の頃から始めたドラムの腕前はずば抜けており、高校時代にはツアーで各地のライブハウスを回るほど。仲間の中にはプロとして活躍している人もおり、今でもテレビで見かけることがあるという。
自らも音楽の道を進もうとは思わなかったのだろうか?そんな素朴な質問を投げかけてみる。「バンド活動をしていた頃に、時間の自由が効くという単純な動機から飲食店でアルバイトをしていたんです。仕事を頑張れば頑張るほど、目の前のお客様が笑顔になっていく。自分が一番輝いていられるのは、この仕事じゃないかと考えるようになりました。」
20才でアルバイト先のお好み焼き店に就職。2年間みっちりノウハウを覚え、1998年、22才で独立。地元、四条大宮に「花たぬき」の一号店を立ち上げる。友人たちの来店で当初は盛り上がるが、繁華街ではないため一見客の集客が見込めず、「これではいけない」と一念発起。お客様から聞いた京都の老舗お好み焼き店を食べ歩く中で、見えてきたことがあった。「ものすごく美味しいわけでも行列ができているわけでもない。何ならジュースは自分で冷蔵庫から出す(笑)。それでも古くて小さい店に常連さんが集まり、昭和を感じる温かい雰囲気がある。」
しかし時代の波と後継者不足から、古き良きお好み焼き店は減少の一途をたどっていた。「この文化がなくなっていくのはさみしい。」そう考えた星山さんは、お好み焼きを通したストーリーを次世代に継承していくことをミッションに掲げた。こうした試行錯誤の中で生まれたのが、京都らしいべた焼ベースのモダン焼「特製たぬき焼」だ。
看板メニューの大ヒットで、店は順調に売上を伸ばした。中心地にも出店を続け、オンラインショップやセントラルキッチンも開設。勢いに乗って2012年には郊外のロードサイドに大型店を出店。そこで転機が訪れた。「どうやってもうまくいかない。今考えると競合店も多く当然なのですが、当時はまったくわかりませんでした。売上が落ち、店長も副店長も退店。店にはマイナスの空気が流れていました。」結局、わずか1年と少しで撤退。しかし翌月には「移転」と名打ち烏丸店を出店。ピンチはチャンス、見てろよ!との思いがあった。
この逆境の時期に生まれたのが、今も社内で行っている「ありがとう通信」という取り組みだ。毎月必ず、全スタッフが誰か別のスタッフに手書きの紙に記した「ありがとう」の言葉を送る。星山さんは150枚を超えるそのすべてに目を通し、票数だけでなく内容を考慮した上でMVPを選ぶ。「会社として温かい人間関係が生まれるようになりました。こうしたふれあいが生まれるのも、この仕事をやっているからこその醍醐味だと感じるようになりました。お客様だけでなくスタッフや関わってくれた人すべてが幸せになってほしい。」
2015年に立ち上げた「KAKIMARU」ブランドも、実はスタッフの発案。将来はバルがやりたいと目標を話すその姿に感銘を受け、「ぜひ一緒にやろう!」と企画したことが発端だ。充実した独立支援制度も数々のユニークな取り組みも、「どうしたら社員が幸せになるだろうか?」と考えた結果であるという。今年は担々麺をメインとした新ブランドのFC展開も計画中。昼がメインの業態を作ることで、スタッフの働き方の幅を広げたいと考えている。「一人でも多くの夢を後押しして、魅力ある飲食業界を築いていく。」根底にある思いは、今後もブレることはない。
2017.11.9更新 取材・文/太田 裕子
【取材したお店】
貝と白ワインのバル KAKIMARU 綾小路店
電話/075-744-1858
住所/京都市下京区綾小路富小路西入る塩谷町66
営業/17:00~翌1:00(L.O.翌0:00)
定休日/月曜日
交通/阪急京都線「河原町駅」徒歩5分
モンテステリース有限会社
株式会社花たぬき
電話/050-7501-5678
住所/京都市右京区西京極南大入町29-4