株式会社Sou 代表取締役 高校卒業後、半年間の工場勤務を経てフィットネスインストラクターに。東京と大阪で4年間活動した後、アパレル企業の営業職を13年間経験。2005年12月、堺筋本町の弁当屋を立ち上げ独立。2011年「おやさいバル TIERRA」を中津で出店。現在3店舗を運営中。 | |
中津にて2店舗を運営し、阪急百貨店にも出店している「TIERRA」。こだわりの野菜をたっぷり使ったヘルシーな料理で、女性を中心に絶大な人気を集めている。オーナーの大戸さんは、異業種から飲食業に入り独立。創造力を生かし、小さな弁当店から着実に歩みを進めてきた。生え抜きの飲食人ではない視点が、居心地の良い店作りに反映されている。 |
料理と接客だけが飲食業のすべてではない
――原点は2005年に堺筋本町で立ち上げたお弁当屋さん。独立までの経緯を教えて下さい。
大戸:父親が寿司職人だったこともあり、小さい頃から食べることが大好き。前職はアパレルの営業職でしたが、先輩たちが他のショップのディスプレイを話題にしている中でも、私はランチのことばかり考えていました。退職を決めた後、今思えば安易な気持ちでしたが、飲食店で独立しようと考えました。職場の近くにこだわりのお弁当屋さんがあり、相談に乗ってもらっているうちに親しくなりました。「失業保険があるので、給料はいらない。半年間修行させてほしい」と頼み、仕入れや店作りを学ばせてもらいました。
――最初の店で掲げたコンセプトは?
大戸:修行先の「羽釜炊きのご飯と、揚物を一切使わない手作りのおかず」というスタイルを譲り受け、さらに独自で「食べて健康になるお弁当」を工夫しました。営業職時代の経験から、他店と同じことをやっても勝負はできないと考えたからです。栄養学を学んだ経験もあり、「ここのお弁当を食べていたら、なんだか元気になった」と言われるお店を目指しました。
――順調に客足は伸びましたか?
大戸:とんでもない。値下げ競争が激しい時代でしたから、ワンコインを超える価格の弁当は厳しい。苦戦を強いられ、1年ほどは給料が出ませんでした。だけど絶対に安売りはしたくない。それをしたら、定価で買ってくれるお客様に申し訳ない。その考えは今でも変わっておらず、当店ではハッピーアワーなどは一切やっていません。
――どうやって苦境を打開したのでしょうか?
大戸:まず、売り切るための予測力を高め、徐々に売れ残りが減っていきました。商売の勘を磨くためにも大事な経験だったと思います。ランチタイムにもだんだん客足が伸び、そのうちに行列ができるようになったんです。配達のオファーや雑誌の取材などもあり、意地で続けてきて良かったなと思いました。
――その後、「おやさいバルTIERRA」さんを出店されています。
大戸:和食経験が豊富なスタッフが入店したことを機に「この子が活躍できるような店を作りたい」と考えるようになりました。中津の一軒家の物件と出会い、「ここでやったら面白そうだな」とひらめきました。横に更地が付いていたので、当時から付き合いのあった能勢の農家さんの助言もあり、畑をやることにしました。
――当初から野菜が主役だったのですね。
大戸:能勢の新鮮な野菜を中心に、米・食味鑑定士が厳選した美味しくて安全なお米を使用し、羽釜で炊いています。コンセプトは当初から変わりませんが、オープンから2年後にスタッフはガラリと変わりました。
――きっかけは?
大戸:当時、私は弁当屋の方にいてTIERRAはスタッフに任せていたのですが、スタッフとお客様の距離が近付き過ぎていることを懸念していました。常連客ばかりが長居し、スタッフが特別待遇でもてなしている。店の利益は上がらず、一見客は入りづらい雰囲気。それは真のホスピタリティではないと伝えたのですが、理解してもらえず全員が退職してしまいました。
――スタッフが変われば、店も変わります。
大戸:人材に対する考え方も変わりました。急きょ雇ったアルバイトは皆大学生。飲食店の経験はないのですが、私の目指す「なんか居心地がいいな」と思える店作りを、柔軟に体現してくれました。経験だけが強みであるとは限りません。飲食業界には独自の常識があり、皆、キッチンかホールの志望で入ってきます。料理と接客だけが飲食業だと思われていますが、そうではありません。表の黒板やSNSの発信なども工夫が必要ですし、もっと想像力を持ってクリエイトしていかなければ、人工知能が発達したら生き残っていけません。
――会社名の「Sou」は、「想像と創造」という二つの意味が込められているのですね。
大戸:お客様が何にワクワクするのか?という視点を常に持っていたいです。その上で気配り、気遣いができるスタッフを育てていきたい。大変な仕事だと言われますが、飲食業ってすごくいい仕事だと思うんですよ。もし世の中に飲食店がなければ、人生はすごくつまらない。想像力を生かして仕事に取り組んでいけば、お客様も増え給料も上がる。スタッフがこの先ずっと働き続けられる、夢を描ける企業でありたいです。
2018.3.29更新 取材・文/太田 裕子
【取材したお店】
おやさいバルTIERRA KAKUREGA
電話/06-6373-2468
住所/大阪市北区中津1-11-31
営業/17:30~23:30(L.O.22:30)
定休日/不定休
交通/地下鉄御堂筋線「中津駅」 2番出口徒歩1分
株式会社Sou
電話/06-4300-5258
住所/大阪市北区中津1-11-31