九州の食べんといかんばい~鹿児島編~ 「あくまき」
鹿児島県では、男の子の誕生を祝う5月5日の端午の節句に欠かせないものがあります。
それは「あくまき」というお菓子。竹の皮で包まれたその中からは、半透明な茶色の物体が姿を現します。その色とぷるんとした見た目から、羊羹のような味を想像する人も多いのだとか。しかし、あくまきは羊羹とは似ても似つかない食べ物なんです。
「あくまき」は、漢字で「灰汁巻き」と書きます。その名の通り、灰汁(あく)を使用しており、灰汁と一緒にもち米を炊いたものなのです。灰汁とは、カシの木などの固い木を燃やしてできた灰に熱湯を混ぜてこしたものです。その灰汁に、もち米と竹の皮を一晩漬け込みます。そして竹の皮でもち米を包んで縛り、さらに灰汁で3時間程煮たらあくまきの完成です。
気になる味ですが、あくまき自体はほぼ無味。ぷるっとしてやわらかいのですが、食べごたえのあるしっかりとした食感です。
そしてここからがあくまきの醍醐味。このままだと微妙に灰汁のえぐみがあるため、好きなトッピングをしていきます。一般的には砂糖やきな粉が多いですが、黒蜜や蜂蜜、砂糖醤油やわさび醤油、大根おろしやココアパウダーをかける人もいるのだとか。色んな味が楽しめていいですね!
そもそもは関ヶ原の戦いの際に、薩摩藩の島津義弘公が日持ちする兵糧として持参したのが始まりだといわれています。気温が高く湿度も多い鹿児島は食料が腐敗しやすいため、灰汁と竹の皮を使って保存がきくよう工夫をしたそうです。
その後、男の子がたくましく健康に成長するようにと、端午の節句にお祝いとして作られるようになりました。薩摩人の知恵が、これからも各家庭で受け継がれていってほしいですね。