九州の食べんといかんばい~大分編~ 「ヒオウギガイ」
まるで絵の具で塗ったような、様々な色のカラフルな貝。大分県佐伯市の蒲江(かまえ)ではこの「ヒオウギガイ」の養殖が盛んで、全国トップクラスの出荷量を誇ります。
太平洋から流れ込む黒潮が美しいサンゴを群生させ、ダイビングスポットとしても有名な蒲江沖。干満により潮流が速く、黒潮と瀬戸内海の海水が混ざり合うこの海は、ヒオウギガイの餌となるプランクトンが大量に発生し、ヒオウギガイは常に口を開けて大きく育ちます。
ヒオウギガイはホタテと同じ「イタヤガイ科」の扇形の二枚貝で、成長すると大きさは約10cmほどあります。ヒオウギガイの語源は、「桧(ひのき)」の薄板を扇状に束ねた姿に似ているため「桧扇貝」、もしくは「緋(ひ:火)」のような鮮やかな色合いのため「緋扇貝」からきているといわれています。
剥き身にするとホタテと見分けがつかないほどで、味わいも似ていますが、ヒオウギガイの方がより濃い旨味があります。そのため火を入れた調理に向き、バター焼きや酒蒸し、天ぷら、グラタンなどにしても旨味が負けず、ヒオウギガイ本来の味が楽しめます。
そして気になるヒオウギガイの殻の色について。もちろん人工的に色をつけているのではなく、貝自身が作り出す色なのです。橙:7、赤:1、黄:1、紫:1の割合で生まれるのですが、稀に、色が混じったマーブル色や、重なる2枚の殻の色がそれぞれ違うものがあったりと、なんとも面白い生態をしています。
ではなぜ個体によってそれぞれ鮮やかな色になるのか?実は、これがまだ謎のままなんです。貝殻に関しての研究があまりにも少ないということもあり、よく分かっていないのが現状です。養殖場では稚貝から大きく育てていくのですが、貝殻の色は遺伝的にある程度の傾向が分かるので、人工的に採卵をして綺麗な色の貝が安定して採れるよう工夫をしているのです。
見た目も味も素晴らしいヒオウギガイが産地以外に出回らないのは、とてもストレスに弱いため。海水に入れて運んでも、環境の変化に耐えられず死んでしまう場合もあるため、なかなかお目にかかれないのです。蒲江では道の駅や直売所などで気軽に購入できるため、皆様も訪れた際は、鮮やかな色とりどりのヒオウギガイを目と舌で楽しんでみてください。