関西の食べなあかんやん~奈良編~ 「胡麻豆腐」
さっぱりとした口当たりと、そのヘルシーさで人気の「胡麻豆腐」は、もともと精進料理の一つです。奈良県や和歌山県の郷土料理としても有名ですが、今や日本全国のスーパーなどでも買えるようになりました。名前に豆腐と付いていますが、原料が大豆の豆腐とは違うものだってご存知でしたか?
日本で胡麻豆腐が作られるようになったのは、鎌倉時代だと言われています。精進料理そのものは仏教と一緒に伝来しましたが、大きく発展したのは禅宗が伝わってきてからでした。それまでの日本食は薄味で、食べるときに調味料をかけて味を調節するという食べ方でしたが、精進料理はしっかりと濃いめに味付けがされていました。武士や庶民にもやがて濃い味付けの料理が浸透していったことから、精進料理の発展は日本食にとっても大きな変化をもたらしたと言えそうです。
胡麻豆腐の原材料は、胡麻・葛粉・水のみ!豆腐と違って、大豆もにがりも一切使用していません。豆腐と呼ばれているのは、形から連想されているだけだそうです。この胡麻豆腐は高野山精進料理にとっては欠かせない一品とされてきました。その作り方はシンプルながらも、手間ひまがかかるもの。胡麻の皮を取って、なめらかになるまで延々と念入りにすり潰します。胡麻の準備ができたら水で溶いた葛粉と一緒に火にかけ、これまた時間をかけて練った後、型に入れて冷やし固めれば完成。この調理過程すら禅寺では修行のうちとされ、重要視されていたそうです。現在では練り胡麻と片栗粉を使うことで、家庭でも簡単に作ることもできますね。
胡麻豆腐は冷奴として食べることがほとんどで、大豆から作った豆腐のように食材の一つとすることはあまりありません。胡麻の良い香りとコクのある味、なめらかな舌触りが胡麻豆腐の大きな特徴です。わさび醤油や生姜タレ、ぽん酢、味噌などと一緒に食べればおかずになりますし、きな粉や黒蜜をかければ和風スイーツとしてもおいしく楽しめます。たんぱく質やカルシウム、鉄、ビタミンなど栄養価も高く、健康にもいいので積極的に食べていきたい食品のひとつだと言えそうですね。