九州の食べんといかんばい~熊本編~ 「ひともじのぐるぐる」
「ひともじのぐるぐる」と聞いて、それが何なのか分かりますか?この謎すぎるネーミングだけを聞くと、大半の方はこれが料理名という事は分からないかと思います。しかし、この「ひともじのぐるぐる」、熊本ではとてもポピュラーな郷土料理なんです。
実は「ひともじ」とは「分葱(わけぎ)」の事を指します。熊本で育てられる分葱は、全体的に少し太めで白根にもふくらみがあるのが特徴です。なぜ分葱が「ひともじ」と呼ばれるようになったのかは諸説あり、生えている形が「人」の文字に似ている事から「人文字」だという説や、ネギが「葱(き)」と一文字で表されていた時代に、宮中の女房たちが「ひともじ」と呼んでいた名残りだという説があります。
作り方は、「ひともじ」をさっと茹でて氷水にくぐらせた後、根元を軸に葉の部分をぐるぐると巻きつけたものに酢味噌をつけて完成!ザクッという歯ごたえの後に、「ひともじ」の独特な香りと甘み、ピリッとした酢味噌が噛めば噛むほど口いっぱいに広がります。
この「ひともじのぐるぐる」、「子どもの頃は嫌いだった」という熊本県民も多いのだとか。お酒を飲むようになって、この大人な味の美味しさに気づくそうです。「ひともじ」は味噌汁に入れたり白和えにまぜたりと、熊本の家庭料理にはよく登場しますが、「ひともじのぐるぐる」はその作業に手間がかかるため、若い世代は作らない人が増えているそうです。あのやみつきになる食感は、ぐるぐる巻きにする事で生まれるもの。他県にはないこのユニークな郷土料理を、いつまでも伝承していきたいですね。