最終更新日 2019年01月10日

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フードサービス業界の労務相談

※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。

「懲戒処分としての出勤停止に期間の上限はないか」

質問1

Q.

  お店のレジ金を横領したことが発覚し、懲戒として、3ヶ月間の出勤停止という処分になりました。出勤停止の間は賃金は支払われないのですが、それだけの期間無収入になるのはさすがにきついです。法律上は問題ないのですか。
【24才 男性】
答え

A.

  労働者が企業秩序を乱すような行為(非違行為)をした場合に、使用者が制裁として課す罰を懲戒処分といいます。大前提として、使用者が懲戒処分を行うためには、就業規則に「どんな行為をしたときに(懲戒の事由)、どんな処分を行うか(懲戒の種類)」を定めておかなければなりません。
 一般的に、就業規則に定められる「懲戒の種類」には、処分の軽い方から、譴責、戒告、減給、出勤停止、諭旨退職、懲戒解雇などがあります。
 このうち、「減給」とは、すでに働いて受け取る権利が発生している賃金から、制裁として一定額を差っ引くことです。減給の制裁は、いったん発生した賃金債権を減額するものであり、その額が大きすぎると労働者の生活をおびやかすことになるため、労働基準法において、制限が定められています(91条)。その制限では、1回の行為に対する減額が平均賃金の2分の1まで減額の合計一賃金支払期の賃金総額(給料日が1ヶ月に1回なら、1ヶ月分の賃金)の10分の1まで、とされています。
 一方、懲戒の種類のうち、「出勤停止」については、法律上の制限は定められていません。「出勤停止」とは、制裁として労働契約を存続させながら就労を一定期間禁止することです。通常、出勤停止になれば、その間の賃金は支払われません。そうすると、「減給」も「出勤停止」も、労働者にとっては、収入の減少という痛みを伴うのですから、法律で同じような制限をしてもよさそうなものです。しかし、行政解釈では、「出勤停止期間中の賃金を受けられないことは、制裁としての出勤停止の当然の結果であって、通常の額以下の賃金を支給することを定める減給制裁に関する法91条の規定には関係はない」と、明確に「減給」と「出勤停止」は別モノとしています。
 そうすると、出勤停止の期間についても制限はなく、どれだけ長期間でも許されるのでしょうか。先述の行政解釈の続きには、「ただし、出勤停止の期間については公序良俗の見地より当該事犯の情状の程度等により制限のあるべきことは当然である」としています。処分の対象となる行為の重さと釣り合いのとれた期間の長さでなければならないということです。
 裁判例の中には、6ヶ月の懲戒休職処分では期間が長すぎ、3ヶ月の限度で有効としたものがあります。しかし、実務的な感覚では、3ヶ月間でも労働者を無収入の状態に置くのは、酷すぎるのではないかと考えられます。
 ご質問のケースにおいて、3ヶ月の出勤停止が有効となるか無効となるかは、裁判を起こしてみないと分かりません。横領した額、常習性の有無、反省をしているか否か、等を総合的に考慮して、行為と処分の釣り合いが取れているか判断されることになります。
グルメキャリー245号掲載

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久野先生

特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE

昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。

ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201

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