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フードサービス業界の労務相談

※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。

「貸付金返済を給与から天引きする場合、上限額はあるか」

質問1

Q.

 過去にお店から借金をして、毎月の給与から天引きされる形で返済しています。しかし、その返済金が給与の半額以上となっていて、正直なところ生活が厳しいです。給与からの返済に、上限はないのですか。
【35才 女性】
答え

A.

 貸付金返済を給与から天引きする場合、その控除額には上限があります。給与の半額以上の天引きは違法となります。
 まず、そもそも、お店から借金をすることや、給与から返済金を天引きすることは、法律上許されるのでしょうか。労働基準法では、前借金相殺の禁止として、「前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない」としています(17条)。しかし、この規定の趣旨は、前借金により身分的拘束を伴い、労働が強制されることを防止することです。労働者からの申出に基づき、生活費等を貸し付けることも、その後この貸付金を賃金から分割控除することも、「労働することが条件となっていない」ことが明白な場合には、この規定は適用されないこととなっています。
 また、労働基準法には賃金支払5原則と呼ばれるルールが定められていて(24条)、その中の一つに「全額払の原則」があります。これは、労働者の生活の糧である賃金に、使用者(お店の側)は1円たりとも手をつけてはならず、全額を労働者に支払わなければならないということです。ただし、この規定の例外として、法令に別段の定めがある場合(所得税や社会保険料等)や、賃金控除について、使用者と労働者代表との間で労使協定を締結していた場合、賃金からの控除は法律違反にはなりません。
 お店からの貸付金と賃金債権との「相殺」についても、この「全額払の原則」は適用されます。ただし、裁判例によると、「労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的理由が客観的に存在するときは、全額払の原則に違反しない」とされています。
 以上のとおり、賃金控除の労使協定が締結されていて、かつ労働者の自由な意思に基づく合意による賃金債権の相殺は、適法となります。(なお、裁判例によっては、合意相殺の場合は、賃金控除労使協定を不要とするものがあります)
 ただし、この条件を満たしていたとしても、民法510条により、相殺は民事執行法152条に基づく差押え禁止の範囲を超えてはならないとされています。その差押え禁止の範囲とは、賃金(手取り額)の4分の3(その額が33万円を超える場合は33万円)です。
 したがいまして、ご質問のように、給料の半分以上を返済金として控除するのは、違法となります。
飲食店オーナーの方へ

飲食店オーナーの方へ

 お店からの貸付金を、給与から天引きして返済することはよく行われています。適法に実施するためには、賃金控除の労使協定を締結し、合意によるものであることを証明する書面を作成した上で、控除額の上限に注意しなければなりません。
グルメキャリー327号掲載

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久野先生

特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE

昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。

ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201

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