最終更新日 2019年01月10日

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フードサービス業界の労務相談

※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。

「固定残業制度で、遅刻分の控除は許されるか」

質問1

Q.

 私の勤めるお店では、固定残業制度となっていて、残業時間がどれだけ多い月も、給料は増えません。それなのに、遅刻をしたら、その分はしっかりと差っ引かれます。なんとなく納得がいかないのですが、問題はないのでしょうか。
【27才 男性】
答え

A.

 結論としては、固定残業制度を導入しているお店でも、遅刻、早退、欠勤等の不就労時間分の賃金を控除することは可能です。むしろ、そもそも固定残業制度自体が、適法に運用されているかどうかが問題です。
 固定残業制度とは、実際の残業時間が発生しようがしまいが、「固定残業手当(定額残業手当)」として、定額の残業手当を支給する制度です。この制度自体が違法というわけではありませんが、使用者(お店の側)に誤解が多いのも事実です。
・労働契約書に、「基本給(または○○手当)には残業代を含む」と記載しておけば、固定残業制度を導入したことになる
・固定残業手当を支払っていれば、それ以上残業代を支払う必要はない。
・労働時間を管理する必要がなくなる
 これらはすべて、使用者によくある誤解です。固定残業制度をめぐる裁判例は数多くありますが、適法と認められるポイントとしては、
(1)基本給等の残業代以外の賃金と明確に区別されていること
(2)残業代としての性格が明確であること
(3)実際の残業時間に対する残業代が、固定残業手当を上回った場合には、その差額を支払うこと
 といったことを、最低限クリアしなければなりません。特に、(3)について厳しく判断される傾向にあります。例えば30時間分の残業代に相当する固定残業手当を支給しているお店において、実際の残業時間が40時間になった場合、差額として10時間分の残業代を加算して支給しなければならないということです。しかしながら、労働時間をまったく管理していなかったり差額が発生しているのにその支払実績がなかったりという理由から、固定残業制度が認めらない裁判例が増えています。
 固定残業制度が認められないと、今まで残業代として支払っていたつもりの固定残業手当までを基礎として残業代の支払を命じられることになり、使用者側にとって、リスクの高い制度といえます。
 さて、ご質問に戻りますと、固定残業制度と遅刻時間分の控除とは、直接は関係しません。おそらく質問の趣旨は、「遅刻分の時間は、固定残業に含まれる残業時間分までは、相殺ということにして、賃金控除はしないでほしい」ということだと思います。確かに、そういった制度設計も可能です。しかし、遅刻分は別に管理して控除する方法も、違法ではありません
 むしろ、「残業時間がどれだけ多い月も、給料は増えません」という部分が気になります。単に固定残業手当でまかなえる残業時間をオーバーしていないだけなら問題はないのですが、先述のとおり、ポイントの(3)をクリアしているか確認した方が良いでしょう。
飲食店オーナーの方へ

飲食店オーナーの方へ

 未払残業代(賃金不払残業)のトラブルが増加するにつれ、その対策として、固定残業制度を導入するケースが増えています。しかし、この制度を適法に運用するのは非常に難しいものです。しっかりと理解しておかないと、かえって経営リスクを伴います。
グルメキャリー301号掲載

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久野先生

特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE

昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。

ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201

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