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フードサービス業界の労務相談

※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。

「年俸制の下で、不就労時間に対する賃金カットはできるか」

質問1

Q.

 私の給料は年俸制となっています。先日、体を壊して3ヶ月間の休職をしたところ、その分の給料は支払われませんでした。年俸制とは、実際の労働時間にかかわらず支払われるものじゃないのですか?
【33才 女性】
答え

A.

 新しいもの好きの経営者が、年俸制を導入したがりがちですが、制度に対する誤解や認識の相違により、運用時にトラブルが発生しています。年俸制といえども、労働基準法上の「賃金」ですので、さまざまな規制を受けます。たとえば、24条には「賃金支払の原則」の一つとして、「毎月1回以上払い」が定められているので、1年分を一括して支払うことは許されず、年俸額を12等分するなどして毎月支払わなくてはいけません。また、残業、深夜労働、休日労働に対する割増賃金や年次有給休暇に関する規定、最低賃金法なども適用されます。
 ところで、通常の月給制の場合、月の日数が31日でも28日でも、曜日のめぐり合わせで休日が多い月でも少ない月でも、月給額は変わることなく、毎月一定額が支払われます。
 以上のように考えると、現行法の下では、実は年俸制も月給制もそれほど変わらないことになります。結局のところ、年俸制とは、向こう1年分の賃金を査定により決定する、というだけのことです。むしろ、トラブルが生じやすくなる危険性に、経営者は注意するべきでしょう。
 さて、遅刻、早退、欠勤や休職をしたときの不就労分に対する賃金カットが、年俸制でも可能かどうかが問題になります。これは一言で言えば、労働契約上の当事者の合意内容しだい、となります。前述のとおり、年俸制だからといって、特別な法律があるわけではないので、制度導入時にどんな合意が成立していたかの問題となります。どうしても”年俸制“という単語を聞くと、プロスポーツ選手を連想してしまいがちです。選手の場合、故障で試合に出られなくても、年俸がカットされるというケースは少ないでしょう。そういうイメージをもつ労働者と、「働いていないのに給料が出るわけないだろう」という使用者(お店の側)との認識の違いです。ルールを事前にしっかり決めておかなかったのが原因ですが、今となっては話し合いによって解決するしかないでしょう。
グルメキャリー125号掲載

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久野先生

特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE

昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。

ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201

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