
モノ・コト・トキと人をむすぶ
イベント型飲食店「さとむすび」が誕生!
2020年9月、羽田イノベーションシティ内に全国各地の地域産品が楽しめるイベント型飲食店「さとむすび」が誕生した!ITによる飲食店の業務効率化を主要事業とする株式会社インフォマートが手がける初のリアル店舗である。今回、全国の自治体と連携したプロモーション、地方創生支援を進める新たな取り組みについて詳しく話を聞いてみた。

株式会社 インフォマート
地方創生推進部
参事 大島 誓二郎 Seijiro Oshima
食品メーカー、電子デバイス会社、食品流通会社等を経て、株式会社インフォマートに入社。2010年1月、株式会社 インフォライズの代表取締役に就任。同社の合併により、2019年1月より現職。

株式会社 インフォマート
統括 横山 正樹 Masaki Yokoyama
18才から飲食の道へ。イタリアン等洋食を中心に修業を重ね、日本国大使館の公邸料理人として腕を振るった経験も持つ。2020年5月より現職。「さとむすび」の統括管理に携わっている。
――IT企業であるインフォマートが、なぜ飲食事業に乗り出したのですか?
大島 当社ではもともと地方創生に力を入れていて、「さとむすび」というウェブサイトを運営してきました。地域の産品を流通させるために、全国の市町村の食のデータベースを作ろうと始まったサイトです。さらに、数年前からは蓄積してきたデータを活かしながら、都内の協力飲食店とタイアップして、プロモーション事業も行ってきました。ただ外部の店なので融通が利かないなど、難しい部分も少なくありませんでした。そんなとき、この場所に新しい街が生まれるという情報を得ました。羽田は世界への入り口であり、流通の入り口でもあります。インバウンドの需要もありますし、企業誘致が多い複合施設なのでそこで働くオフィスワーカーや病院、ホテル、イベントホールなどのお客様の来店も期待できます。この立地なら成り立つだろうと、思いきってリアル店舗の出店に踏み切ったのです。

――「さとむすび」とはどんなお店ですか?お店のコンセプトを教えてください。
大島 大きな目標として掲げているのは、まだ知られていない素晴らしい「モノ」「コト」「トキ」と人を結ぶことです。そうしてまだ知られていない価値を、たくさんの人に広げていきたいですね。まずは食からスタートして、たとえば美味しいものを食べたときにこの産地はどこなのか、どこに行けば本物が食べられるのかを知ってもらえる場所にして、観光とつなげたり、中長期的には移住や定住に結びつけたりするような仕組みにしたいと考えています。
――現在、提供している料理の魅力について教えてください。
横山 料理に関しては、郷土料理から地域の名産を活かしたものまで、和食・洋食の概念を超えたメニューを用意しています。現在は、北海道北見市、岡山県美咲町、長崎県平戸市、宮崎県木城町の地域とタイアップしています。都道府県単位ではなく、市区町村単位に着目した店は他に見かけないでしょう。日本には1718もの市町村が存在しているので、そこを推し立ててアピールしたいと考えています。また、飲みものについてもコーヒー以外はほぼ100%国産品で揃えています。ワインやウイスキー、スピリッツも日本のものです。数ヶ月のスパンでタイアップする地域を入れ替え、今後もお客様に飽きられないメニューを考案していきたいと思います。
――ゆったりとした店舗空間ですが、何席あるのですか?
横山 客席は全部で100席です。気軽に楽しめるスタンディングスペースとカウンター席、奥にはイベント開催に対応したダイニングゾーンがあります。ダイニングゾーンの壁には大きな日本地図を用意して、今、どの市町村とタイアップしているのかが視覚的に一目でわかるようになっています。さらに、店内には5台のモニターを設置し、それぞれ違う映像を流すことができます。食に関してだけではなく、各地の観光やイベント情報など、様々なピーアールが可能です。

▲気軽に楽しめるスタディングスペース

▲調理シーンを垣間見ることができるカウンター席
大島 ダイニングゾーンは貸し切りにすることもできるので、ウェディングや宴会のご利用はもちろんですが、全国各地の自治体の商談会などにぜひ活用していただきたいですね。150インチの大型プロジェクターを備え、音響設備も整っています。ウェブ会議のシステムを使って、現地とライブ中継をつなぐこともできます。

▲様々なイベントに対応可能なダイニングゾーン
――中心となるお客様の年齢層はどれくらいですか?
横山 30代から40代の男女がメインターゲットです。今はコロナの影響で、近隣にお住まいの方がほとんどです。観光客やインバウンド需要はまだ見込めませんし、オフィスワーカーもテレワークになってしまっていますから。それでも、先日、施設の本格稼働に合わせたオープニングイベントを行ったところ、たくさんのご家族連れがいらっしゃいました。連休中、1500人の方にご来店いただきました。このエリアはそれだけの大きなポテンシャルがある立地なんです。実は、人気ドラマのロケ地としても使われているんですよ。将来的には、観光やデートスポットとしてもにぎわう、小さな“お台場”のような場になっていくと思います。

――さとむすびで働くスタッフの皆さんはどんな方ですか?
横山 学生や主婦、フリーターの方など幅広いスタッフが揃っています。全員のネームプレートにはそれぞれの出身地を書いているんですよ。「ここの出身なんだ」と、お客様との話がはずむきっかけになればと取り入れました。東京に出てきて自分の地元を応援したい人、地方出身者は特に歓迎します。いずれ地元に戻って働きたいと思っている学生さんや東京出身でも地方への移住に関心のある方、地域のブランディングをしたいと考えている方たちと一緒に働きたいですね。これからは、マネジメントのできる幹部クラスの人材が必要になってきますが、そういう方たちにとっても魅力的な職場になるでしょう。飲食業の枠にとらわれない、やりがいのある仕事にチャレンジできる環境だと思います。
――今後のイベントなどの開催予定を教えてください。
大島 10月27日より一般社団法人 日本フードサービス協会のジビエセミナーがスタートします。ここでイベントを開催するだけでなく、会員向けにその模様をウェブ配信します。また10月末から施設内のイベントホールでB’zが無観客配信ライブを5週連続開催します。それに合わせて、街全体をB’z一色に彩る計画が進んでいます。無観客での開催ですが、B’zファンの多くの人たちにこの街を知ってもらう良いきっかけになるのではないでしょうか。 さらに、11月6日からは、宮崎県木城町のイベントを行います。メディアを招待し、木城町の町長も来られる予定で、今後も各種イベントは目白押しです。
横山 今後のコロナの状況次第ですが、今後は都内の飲食店とコラボしながら、イベントやフェアをどんどん催して、継続的な取引につなげていきたいですね。また、もうすぐ酒類販売ができるようになるので、レジ横に物販コーナーを設置します。都内では流通していないような商品もたくさん取り揃えているので、お土産やお酒などの物販にも力を入れたいと考えています。
――「さとむすび」の現在の課題と今後の展望を教えてください。
大島 うーん、現状では、課題がいっぱいありすぎて……(笑)。まずは、集客ですね。羽田イノベーションシティという施設を含め、まだまだ知られていないので、周知を図るのが我々の第一にやるべきことだと思います。そのためにも、ここで働くスタッフたちがお客様にわかりやすく伝えたり、説明したりできる体制を作っていかなければなりません。タイアップする地域についても、サービスについてももっと学べる機会を多くしたいと考えています。あとは、飲食業界に業務効率化を推進する会社として、会計は完全キャッシュレス、非接触型決済を導入しています。現金を使わなければ、レジ締めの労力は大幅に軽減できます。こういう店をもっと増やさなければという一方で、まだお客様のニーズとマッチしていない部分もあり、これについても課題と言えるかもしれません。当店は情報のハブになる場所ですから、今後もその役割を担い続けていきたいと思います。「さとむすび」は日本全国の地域を知っていただく場、日本全国1718の市町村単位で知ってもらおうという取り組みは他にないでしょう。食だけではなく、「行ってみたい」と観光につなげ、最終的には「住みたい」と移住に結びつけるまでをプロジェクトにしています。たくさんの人たちにここに来て、リアルに味わい、体験してもらいたいですね。これからも様々な情報を発信しながら、人と地域を結ぶハブになっていきたいと思います。

住 所/東京都大田区羽田空港1-11-4
羽田イノベーションシティゾーンH2F 【Mapを見る】
店舗HP/店舗の情報はこちらから
電 話/03-6459-9276
企業HP/株式会社 インフォマート
文:西田 知子 写真:ボクダ 茂
2020年10月29日 掲載