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株式会社 ゴーゴーカレーグループ
代表取締役 宮森 宏和
事業を成功させる秘訣は
原理・原則を追求すること
宮森 宏和
– Hirokazu Miyamori –
1973年、石川県金沢市生まれ。高校卒業後、旅行の専門学校へ進学。その後旅行会社に入社。2003年に退職し、翌年、「ゴーゴーカレー」第1号店を新宿にオープン。その後、国内外に店舗を展開し、金沢カレーブームを巻き起こした。趣味はトライアスロン。
2020年3月掲載
松井選手の満塁ホームランが 人生を変えるきっかけとなった
国内外に多くの店舗を展開する「ゴーゴーカレー」。鮮やかな黄色のなかに赤い文字で書かれた店名、トレードマークのゴリラが目をひく。
「ゴーゴーカレー」は、石川県で広く愛されている「金沢カレー」の店だ。ソースがかかったカツを濃厚なルーの上にのせ、キャベツの千切りを添える。それを、ステンレスの皿とフォークで食べる。
代表取締役の宮森宏和氏が「ゴーゴーカレー」第1号店をオープンしたのは、2004年の5月5日。それまでサラリーマンとして働いていた宮森氏は、あるきっかけから脱サラを決意する。それは2003年4月、元メジャーリーガーの松井秀喜選手がニューヨークヤンキース移籍後の本拠地開幕戦で満塁ホームランを打ったことだった。
「同じ石川県出身で同世代。その松井選手がホームランを打った瞬間、自分の人生が変わりました」
それまで宮森氏は、独立ではなく、当時勤めていた会社で社長になることを志していた。
「出世したいからではなく、会社の労働環境をもっとよくしたかったから。お世辞にもいいとはいえない環境を改善するには、社長になるしかないと考えていたんです。なので会社が主催する企業のバスツアーに同行し、さまざまな会社の重役から話を聞いて、事業や経営について模索していました。でも、そうこうするうちに会社が合併して状況が変わり、どうしようかと考えていたところに、松井選手がホームランを決めた。胸が震えるほど感動しましたね。『自分も負けていられない。人に頼らず、自分で事業を起こせばいいじゃないか。ニューヨークで勝負できる会社を、自分で作ろう』と決意したんです」
どうすれば、ニューヨークで勝負できるか。そう考えたとき宮森氏の目にとまったのが、子どものころから親しんできた「金沢カレー」だった。カレー店は全国に数あれど、チェーン展開している企業は少なく、金沢カレーは東京にさえ進出していなかった。海外でもカレーはラーメンほどの知名度を得ていない。これこそチャンスだった。
原理・原則に立ち返れば 苦境を脱する道が見えてくる
ホームランから3ヶ月後には勤務先に辞表を出し、会社を立ち上げた宮森氏。翌年には「ゴーゴーカレー新宿総本店」をオープンし、2007年には念願のニューヨークにも出店を果たした。その後も出店を続け、現在は国内に70店舗、アメリカを中心とする海外に11店舗を展開している。
その道のりには、宮森氏にとって転機となる、大きな苦境もあった。そのひとつは、第1号店開店の半年後に訪れた。
「オープン初日から1ヶ月間、カレーの55円キャンペーンをやりました。連日多くのお客様に来ていただきましたが、あまりにも数が多くて”いらっしゃいませ恐怖症”になったほど(苦笑)。ところがキャンペーンが終わったとたん、ぱったりと客足が途絶えました。常連だと思っていたお客様のお姿さえ、見られなくなり・・・経営の現実を知ったというか、目が覚めたような思いでしたね」
その苦境を脱するため、宮森氏は原理・原則に立ち返る。
「お客様に来ていただくには、まず店を知っていただかなければなりません。なので、朝昼晩、ときには夜中にも、スタッフ総出でポスティングをしてまわり、僕はさらにいろいろな方に会って宣伝活動をしました。チラシは、月に3万枚ほど配りましたね。すると、目に見えてお客様が増えていったんです。チラシ配りなんて基本的なことですが、徹底的にやれば、やっただけの結果が出る。その原理・原則に立ち返ることの大切さを身をもって知ったこのときが、本当の創業だったような気がします」
もうひとつの転機は、それから10年経った2014年のことだった。出店数を伸ばしていくなかで、赤字に陥ったり、投資回収できない店舗が生じ、経営を悪化させていったのだ。
「大変でしたが、やはり原理・原則に立ち返るしかないと思いました。なので、一つひとつの店舗で丁寧に仕事をしつつ、赤字店舗は閉めるなど、足元をしっかりと固めることに専念したんです。ちょうどそのころ、かねてから開発していた当店のレトルトカレーが完成しました。新しい店舗は作れないけれど、そのかわりにレトルトが評判となり売り上げ増につながりました。また、この時期があったからこそ、財務的な知識が増え、経営の”筋肉”がついたと思っています」
マーケティングの基本は
目の前の人を喜ばせること
宮森氏の話には、幾度となく「原理・原則」という言葉が登場する。
「自分たちがどこにいても、何をやっていても、大切なのは原理・原則です。つまり、初心を忘れないことですね。ゴーゴーカレーは今後も国内外に店舗展開していきますが、大切にしなければいけないのは、利益拡大ではなくてお客様目線です。お客様の立場になって、お客様が喜ぶカレーを作るのが僕らの役目。たとえば今はベジタリアンカレーやハラルカレーを開発していますが、ほかにも健康効果やボケ防止効果のあるカレーなど、カレーにはいろんな可能性があります。その可能性と美味しさを追求したいですね」
宮森氏は、スタッフにもその価値観に共感してもらいたいと話す。
「僕らのミッションは『美味しいカレーを世の中に広め、世界を元気にする事』。カレーには、ドラマがあるんですよ。『子どものころお母さんが作ってくれた』とか、『部活のあとに食べたな』とか。誰もが人生のなかにカレーの思い出、原風景を持っている――
カレーは、人生そのものなんです。だから僕はカレーに魅了されているし、カレーが人を元気にすると信じている。そんなビジョン、価値観を共有して、一緒に成長できる人と仕事がしたいですね」
東日本大震災時の食料支援、公益財団法人School Aid Japanにおける小学校建設など社会貢献活動のほか、子どもたちのスポーツイベントの開催・協賛といったスポンサー活動も積極的に行う。宮森氏の『カレーを通じて、世界を元気に』というメッセージは、これからもさらに広がっていくだろう。
「僕は独立したとき、『偉くなろう』とか『金持ちになろう』ではなくて、いい会社を作りたかった。それもスタッフにとって、お客様にとっての『いい会社』で、自分のことは後回しでした。今となっては、それがよかったのだと思っています。マーケティングって、要するに、人を喜ばせることなんですよ。なので、もし独立を考えている人がいるなら、まずは冷静に、自分は誰を、どうやって喜ばせることができるのかを徹底的に考えたほうがいい。『目の前の人を喜ばせる』という原理・原則を本気で追求できるなら、きっとうまくいくでしょう。飲食業は、目の前でお客様が喜ぶ姿を見られるのだから、楽しいしやりがいも大きいですよ。目の前のお客様が、ゴーゴーカレーを食べて喜んでくださる――僕にとってこんなに嬉しいことは、ほかにないんです」
ゴーゴーカレー 大手町日本ビルパーク店(取材店舗)
株式会社 ゴーゴーカレーグループ
─ 店舗情報 ─
ゴーゴーカレー大手町日本ビルパーク店
住 所:東京都千代田区大手町2-6-2 日本ビル・パソナグループ本部ビルB1F
電 話:03-3246-0755
ゴーゴーカレー新宿総本店
住 所:東京都新宿区新宿3-31-5 吉田屋ビル
電 話:03-6457-7655
お茶の水駅前店
住 所:東京都千代田区神田駿河台2-1-17 お茶の水SIAビル1F
電 話:03-3219-2255
神田駅南口パーク
住 所:東京都千代田区鍛冶町2-1-2 鋭光ビルB1F
電 話:03-6206-4355
渋谷警察署前スタジアム
住 所:東京都渋谷区渋谷3-18-5 佐藤エステートビルB1F
電 話:03-6427-6155
上記含め、現在国内70店舗、海外11店舗展開中
文:瀬尾 ゆかり 写真:ボクダ 茂
2020年03月05日 掲載
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