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株式会社 オフィスタナカ
代表取締役社長 田中 修平
さらなる発展を図る組織化を推進
プロ飲食人の集団を目指す
田中 修平
– Shuhei Tanaka –
1980年生まれ。幼少から長崎佐世保・五島列島で育ち、大学在学中のアルバイトをきっかけに飲食の道へ。卒業後、大手居酒屋チェーンに7年間勤務。その後、株式会社 KIDS に転職。同社の独立支援制度を活用し、2010年11月、1号店となる「田なか屋本店」を仙台にオープン。現在、東京・仙台・名古屋の3エリアに和食、郷土料理など15店舗を展開。
2020年2月掲載
東京・仙台・名古屋に15店舗展開 エリアを分断して職場環境が安定
今年、オフィスタナカは創業10周年を迎える。和食、郷土料理などを中心に15店舗を運営中。昨年も、名古屋市金山に2店舗をオープン。躍進し続ける背景を、代表の田中氏は次のように語る。
「当社の1番の強みは、幹部が現場をよくわかっているところ。各店長・料理長と二人三脚で、リピーター作り・スタッフ教育・料理開発の3軸を課題に日々奮闘しております」
地方の食材や食文化にフォーカス。”ご当地”を打ち出した業態を、東京・仙台・名古屋の3つの地域で店舗展開している。物流効率などを考慮し、同じ沿線内など地域を絞って出店する飲食系企業も多いなか、手広く遠方に出店する理由とは?
「そういう質問をよくされるのですが、エリアを分断することで現場のストレスを軽減できるからです。アルバイトまで含めると総勢250名くらいの大所帯。それをエリアごとに分ければ、地場の個人経営の規模と変わりません。各エリアで計画的に採用活動を進めているので、職場環境が安定します。大手にありがちな欠員補充のために次々とスタッフを異動させる、いわゆる”玉突き人事”なども発生しなくなるんです。1エリア50人の組織図よりも1エリア社員15人~20人前後の組織の方が、お互いの顔が見えて仲間意識が強く切磋琢磨できる環境が作れます。エリア別にカラーも違いますし違う会社が3社あるような感覚です」
また、多様なスタッフを擁して、高いサービス、料理のクオリティーを維持している。
「元・寿司職人、ホテル出身者、洋食・中華経験者など経験豊富な料理人が在籍しており、メニューも各店の料理長主導で開発を行っています。『製造と販売が一体化』している飲食店の強みを最大限に活かすことが大事なんです」
独立後まもなく大震災に遭遇 あの創業期を乗り越えて今がある
学生時代にバーでアルバイトをして、「人と人を結ぶかっこいい仕事」と魅了されたのが、田中氏が飲食の世界を志すきっかけとなった。卒業後、大手居酒屋チェーンに就職。店長として経験を積んだ後、株式会社 KIDS に転職。独立支援制度を活用して、2010年、「田なか屋本店」を仙台に構え、「30才で独立」という夢への第一歩を踏み出した。
「いい物件があるからと、縁もゆかりもない土地に飛び込みました。お金が全くなくて、あるのは若さとやる気と度胸だけでした」
その後、次々と店舗を拡大。いよいよこれからというときに、あの大震災に見舞われる。
「当時は外食しようという雰囲気ではなかった…なので経営状況から見ても厳しい状況が続きました。ただ1つ救われたのは、都内の店舗が仙台ご当地を売りにした居酒屋だったことで、それによって都内の復興需要が見込めたのです。『仙台のオーナーさんのお店を応援しよう』というお客様が多くご来店くださり、助けられましたね」
その年の11月には、五反田の駅前にも「田なか屋本店」をオープン。最早「走り出したら止まらない」の状態で、がむしゃらに突き進んだ。
「従業員も抱え、お金が回り出していました。当時の五反田駅前店の家賃は200万円。そのときの自分の家賃は2万円です(笑)。タコ部屋みたいなシェアハウスに住んでいました」
複数の大型店を運営するには、相応の経費が必要になる。赤字ギリギリで、資金繰りに四苦八苦する日々が続いた。それでも、もはや倒産かという苦境に立たされても、田中氏は屈せず明確な目標数値を設定。スタッフみんなで声をかけ、励まし合い、1つ1つ着実にクリアしていった。12月の忘年会シーズンには、目標を上回る過去最高の売上を達成。翌2012年以降も売上高を伸ばし続け、いつしかオフィスタナカは安定軌道へと乗っていた。
「どんなに苦しい中でも、仲間がいてくれた。それがあったので、創業期を乗り越えられたのです。彼らは、今も幹部として活躍してくれています。1人のときは不安でいっぱいになっても、営業中は最高に楽しかったですしね。お店に入れば、スタッフみんなが『社長』と呼んでくれて、お客様から『えっ!? オーナーさんなの?』と驚かれたり。年配の方も多いので、若い人間が頑張っていると後押ししてくださるんですよ。最初から順風満帆に進んでいたら、今はなかったのではないでしょうか」
プロが集まればみんなが楽しい
お客様をもっと楽しませられる
今でこそ創業時の苦労も語り草になっているようだが、田中氏は「ある種のトラウマ」を負った。努力して店を増やしても、天災などの不可抗力は避けられないという現実に直面したのだ。それでも、店舗数を拡大し続けてきたのには理由がある。
「仙台にお店を増やしているのは、雇用をつくるためでもあります。学費などリアルに稼がなければならない人も多いし、税金も復興に使われる。社会貢献したいという気持ちが芽生えたからです。生産者さんとの出会いも理由の1つ。故郷の五島列島のご当地居酒屋を開業すると、予想以上に長崎県の方々が応援してくれました。島の人口が減っていく中、特産品を絶やさないためにも消費する場所が必要なのです」
一方、店舗拡大に伴って、喜ばしい変化も起こってきた。多彩なバックグラウンドを持った質の高い人材が続々と集い始めた。
「会社が成長すると、プロフェッショナルな人たちが増えました。プロ飲食人が集まれば、スタッフみんなが楽しいし、私自身も楽しい。これまで以上にお客様を楽しませられるでしょう」
オフィスタナカでは、”飲食人が夢を持ち達成できる環境創造”を企業理念として掲げ、さらなる労働環境の整備を進めている。
「人々が楽しく飲食する場を提供する私たちの仕事は社会的な意義が高い仕事ですが、信念がなければルーティンワークに没頭する毎日になってしまいます。人生を豊かにするには、『時間』『お金』『仲間』が必要。この3つを持って、仕事に取り組める環境を目指します」
飲食業界のAI化が進む中、プロの気概とスキルを持った人材のニーズはますます高まっていくだろう。そんな人々に熱い期待を寄せながら、田中氏は次なる目標を見据えている。
「さらなる発展のために組織化を進め、各エリア10店舗の体制をつくりたいと考えています。次の10年を担う幹部社員になりたいという人も、将来、独立したいという人にも積極的にチャンスを与えたい。そういう人たちを仲間に迎えて、目の前のお客様が何を求めているのかを真剣に考えて提供できる、プロ飲食人の集団を目指したいですね」
あぶみ邸 五反田(取材店舗)
株式会社 オフィスタナカ
─ 店舗情報 ─
あぶみ邸 五反田
住 所:東京都品川区東五反田1-13-3 デュロス五反田7F
電 話:03-3473-3377
長崎五島列島居酒屋 つばき庵 新橋
住 所:東京都港区新橋2-14-3 5F
電 話:03-3591-1109
田なか屋本店 五反田
住 所:東京都品川区東五反田1-13-3 デュロス五反田B1F
電 話:03-3442-3353
千代の蔵 仙台西口
住 所:宮城県仙台市青葉区中央3-6-10 マックスマクタビル 4F
電 話:022-263-1156
九州三昧 まんぞう 金山
住 所:愛知県名古屋市熱田区金山町1-13-5 ふじやま店舗ビル1F
電 話:052-265-8998
他、現在15店舗展開中
文:西田 知子 写真:ボクダ 茂
2020年02月20日 掲載
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