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株式会社 ビート・インターナショナル
代表取締役 渡邊 剛志
飲食で成長を続けるために
海外に日本の本物の文化を広める
渡邊 剛志
– Takeshi Watanabe –
1971年、横浜市生まれ。20才の頃、イタリアを旅し、イタリア料理の美味しさに衝撃を受ける。2007年7月、株式会社 ビート・インターナショナルを設立。未経験から飲食ビジネスに参入し、同年9月、「トラットリア ボッカ ボーナ」をオープン。2017年12月、富美善 株式会社を子会社化。現在、イタリアン8店舗・とんかつ「ふみぜん」を運営。
2019年9月掲載
老舗とんかつ店で海外進出 創業時からの想いを実現する
2012年にも、渡邊氏は本誌の誌面に登場している。当時、イタリアン6店舗を展開。スタッフが増えはじめ、大型商業施設にも出店。勢いに乗るチームを率いて、前へ前へと進む姿を追った。あれから7年――また次の大きな波がやってきているようだ。前回とは打って変わって、インタビューの場は純和風の店舗。ホテルニューオータニ内の老舗のとんかつ店「ふみぜん」である。
「実は、もともと和食の店に興味がありました。創業時から、海外展開したいという想いを持っていたのですが、やはり日本人のつくるイタリアンとなると難しい。和食なら、その可能性があるだろうと考えたのです。ただ、一から立ち上げる大変さは十分わかっていたので、こういう基盤のしっかりとしたお店は魅力的でした。場所柄、歴代の総理大臣や有名なスポーツ選手など著名人の来店も多く、良いお客様がたくさんついている老舗です。アジアを中心に、とんかつがブームになっていることも把握していました。M&Aの情報を得て、スピーディに動き、2017年12月に子会社化しました」
翌年には、内外装をリニューアル。次なるステップに踏み出すための準備を着々と進めている。
「良く言えば老舗感ですが、悪く言えば、かなりくたびれてしまっていました。はじめに襖や畳などの一部を改装したのですが、どうもパッとしない。これから海外に打って出ようというのに、店を見てもらってこの状態では響かないのではと思い、外装から大幅に工事をしました。座敷をなくして全部テーブル席にしたり、レイアウト以外は面影がないくらい変わっています」
メニューもブラッシュアップし、客足を伸ばし続けている。同時に、ホームページを再構築。英語版のページも用意した。
「社名に”インターナショナル”とつけたのも、海外に向けて仕事をしたいという気持ちからです。電話で何度も問い直されたり、長くなるのでビートだけにしておけばよかったなと感じることもありましたが、ようやく意味を持つようになりました」
スタッフが力を発揮できるよう方向性を打ち出すのが私の仕事
一方、イタリアンでも店舗展開を続けている。昨年4月には、8店舗目となる「トラットリア ラ グロッタ」を銀座5丁目にオープン。
ただし、すべてが順調に運んできたわけではない。なかには、クローズを余儀なくされた店舗もある。
「以前は売上が上がりそうな出店のオファーがあれば、立地に合わせてアレンジすればいいと考えていましたが、簡単なことではありません。私たちが得意にしているのは、ワインを一緒に楽しめるような本格的なイタリアン。ところが、ショッピングセンターではメインがお買い物なので、カフェのようなお店が求められます。また、若い客層が増えると見た目の”かわいさ”が重視されたりして調整が必要になってきます」
それ以上に問題になったのが人員の配置。スタッフにはイタリア料理を心から愛し、お客様に吟味してもらうことにやりがいを感じている人が多い。実はカフェスタイルの店舗への異動を拒否する人が相次いだという。
「現在の8店舗は現場の判断でメニューが変わったり、独立系的な運営を行っています。これからも違う毛色の出店は控えて、同じようなタイプの店づくりを進めていきたいと考えています。これは料理長や店長の能力が高くなければ実現できないことですが、スタッフはしっかりとそれに応えてくれています」
飲食ビジネス未経験から、ここまで事業を発展させてきた経営者ならでは。渡邊氏は常に敬意を持って、スタッフ一人ひとりに接している。
「調理やサービスのプロとして、とても尊敬しています。彼らがパフォーマンスを十分発揮できるように方向性を打ち出し、全体のバランスをとるのが私の仕事です。繁盛店を視察したり、データを分析して、改善点を見出すように心がけています。それをどう伝達するのかも大切。裏付ける数字を共有した上で、納得して取り組んでもらいます。全店でモニター調査を実施しているので、その結果をお客様の声として伝える場合もあります。スタッフは皆、人を喜ばせたいという想いが強いので、お客様がこう望んでいると伝えるとすぐに動いてくれるんですよ」
社内イベントなどのコミュニケーションも盛ん。この秋にも、3回目のイタリア研修旅行を予定している。
「飲食の仕事をしていると、1週間休んでの旅行なんてなかなかできませんから。ワイナリーやチーズ工場を見学したり、美味しいものを食べたり、昨年はミラノ、ヴェネチア、ローマ、ナポリとまわりました。普段話をする機会がないスタッフ同士も仲良くなり、自然につながりが生まれます」
夢を語る前に周りの人たちを
満足させられる基盤を築きたい
すでに年内に、「ふみぜん」2店舗の海外出店は決定。場所はカンボジアのシェムリアップとフィリピンのマニラだ。マニラに関しては3年間で3店舗出店のFC契約も交わしている。
「運営は基本的に現地の人たちに任せるので、レシピやノウハウを伝えるためのマニュアルを作成して提供します。この店にも、現地の店長と料理長がトレーニングに来ているんですよ。なにしろ初めての仕事だけに、内心ハラハラしています」
片や、イタリアンの店にマニュアルは存在しない。信頼できるスタッフが育ち、安心して任せられるチームができているからだ。
「細かな価値基準はそれぞれ違ってもいいと思います。同じ本を読めとか、同じ言葉で挨拶をするのも不自然で気持ち悪いと感じてしまいます。お互いの常識や倫理観で運営できるチームになれたらと思います。スタッフみんなが自立した大人の集団であり続けたいですね」
ただし、完成したチームであればこそ、1人でも抜けたときのダメージは大きい。店舗数を拡大していくには、ハードルの高い業態ともいえるだろう。渡邊氏が海外に目を向けたのは、そういう理由もあってのことだ。一見チャレンジングなようだが、現実的な選択でもあった。
「十何年経営してきて、考えがどんどん現実的になり、壮大な夢は語れません(笑)。ただ、いつも思っているのはお客様、スタッフ、業者さんや大家さんにも、みんなに感謝して応えたいということ。売上至上主義ではないですが、売上が上がれば応えらえる。飲食で成長を続けるには、海外に日本の本物の文化を広めていくべきでしょう。夢を語る前に周りの人たちを満足させられる基盤を築き、そのレベルをさらに上げられるよう努力し続けたいと思います」
ふみぜん(取材店舗)
株式会社 ビート・インターナショナル
─ 店舗情報 ─
ふみぜん
住 所:東京都千代田区 紀尾井町4-1
ホテルニューオータニB1F
電 話:03-3262-7096
Torattoria La Grotta
住 所:東京都中央区銀座5-10-1
プリンスビルB1F
電 話:03-6280-6290
PIZZERIA E BAR BOSSO
住 所:東京都千代田区丸の内1-4-1
丸の内永楽ビルディングB1F
電 話:050-3187-8411
BOSSO(八重洲店)
住 所:東京都中央区八重洲1-4-16
八重仲ダイニングB1F
電 話:03-3527-9474
Trattoria Bosso
住 所:東京都江東区豊洲3-2-20
豊洲フロント1F
電 話:050-3186-4790
上記含め、現在9店舗展開中
文:西田 知子 写真:ボクダ 茂
2019年09月13日 掲載
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