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株式会社 ゼネラル・オイスター
代表取締役 CEO 吉田 琇則
おいしくて安全性の高い牡蠣の可能性を追い続けたい。
吉田 琇則 – Hidenori Yoshida –
1967年、岩手県出身。大学卒業後、エイベックスグループに入社。2000年に独立し、オイスターレストランを経営する株式会社 ヒューマンウェブを立ち上げる。現在は全国32店舗を展開。今年4月、会社名を株式会社 ゼネラル・オイスターに変更。趣味は読書とゴルフ。
扱いが難しい牡蠣だからこそやりがいがあると確信
ほどよく日に焼けた肌と大きな体、そしてニコニコとした笑顔。岩手県の盛岡市で育った吉田氏が牡蠣という食材に目をつけたのは、第一に小さなころからなじみのあった食べ物だったからだと言う。
「とはいえ、子供のころは牡蠣はあまり好きじゃなかったんです。でも大人になって、海外旅行先でオイスターバーに出会ったときに、牡蠣×白ワイン、牡蠣×シャンパンという組み合わせがとてもおいしくて。当時は日本にはオイスターバーのようなものはあまり見かけなかったし、意外と隙間市場なんじゃないかって。それに、歴史をいろいろと調べてみると、ヨーロッパではここ20年~30年「日本食ブーム」でお刺身やお寿司を食べるようになりましたが、それ以前は生の魚を食べる食文化がなかったんです。だけど唯一牡蠣だけは昔から生で食べていた。つまり、牡蠣は歴史と伝統と文化のある食材なんです」
では、なぜ日本では牡蠣に特化したレストランがほぼなかったのか。その理由について吉田氏はこう語る。
「日本は島国で魚介類が豊富にとれるので、牡蠣にフィーチャーしなくてもよかったんです。それに、扱いが難しいから大手の企業は参入を敬遠する。でも、だからこそ僕は牡蠣の世界にやりがいを感じたし、牡蠣のおいしさを日本にも広めたいと考えたんです。ただ、見本がなかったので、自分で試行錯誤してやっていくしかなかった」
その想いを形にするべく、試行錯誤を繰り返し、吉田氏がオイスターレストランの一号店をオープンしたのは2001年。しかし、最初は今とは違う流通方法で牡蠣を扱っていた。
「当時は、産地直送で牡蠣を仕入れていたのですが、2006年にノロウィルスが大流行し、牡蠣が危ないという情報が流れはじめました。でも結局、数百件あるノロウィルス報道の中で、牡蠣が原因だったのは数件。つまりは風評被害だったんですが、お客さまも7割ぐらい減って、会社も倒産寸前までいきました。そこで、どうしたら”安全な牡蠣”をお客様にご提供できるのかを考えるきっかけになりました」
アタラナイ牡蠣づくりへ向けて取り組むことを決意する
生牡蠣は、仮に菌が入っていたとしても、お店で表面を洗ったぐらいではなんの解決にもならない。つまりは、お店側で安全性のコントロールはできないので、産地まかせになってしまう。これを自分たちの手でどうにかしたいと思った吉田氏は、会社の経営が傾いている大変な時期でありながらも、あるひとつの決断をする。
「牡蠣は1時間に20リットルの水をすって、はいて循環するんです。だから海水などに菌がいるとそれが中に残ってしまい、食べた人がおなかを壊す……というシステム。だから牡蠣は鮮度だけがよければいいというものではないんです。そこで、僕は物流センターをつくろうと決めました。そこで何をするかというと、全国の牡蠣をいったんセンターに集めて、紫外線で殺菌した海水につけて、48時間ぐらい循環させるんです。そうすることで、牡蠣の中にたまった菌が流れでるというメカニズムになっています。その後、検査をしてみるといろんな産地の牡蠣に付着した菌の数値がおどろくほど下がっていました。こうして安全性を高めた牡蠣を全国のお店に届けるという仕組みをつくったんです。この仕組みをつくるうえで、周囲の反対もありましたが、”何とか安全な牡蠣をお客様に提供したい”という一心でしたね。でも、この取り組みのおかげで、お客さまが徐々に戻ってきて、2015年には東証マザーズ市場へ上場も果たしました」
新鮮な牡蠣を一度物流センターに集めて、浄化してから、お店に出荷する……という新しい流れが、会社の運命を変えた。牡蠣の安全性を高めるためには自分たちの手で創るしかない。それはまわりから見れば、想定外の決断だったかもしれないが、吉田氏の常に新しいことに挑戦するという意志が、会社と牡蠣の未来を切り開いたのである。
経営者としてのモットーは
あまり細かく考えないということ
明るいトーンで軽やかに話す吉田氏の経営者としてのモットーは、意外にもシンプルである。
「僕は昔から好奇心が旺盛なんです。ただ、その好奇心が今でもステップアップに繋がっていますね。常に新しいことや誰もやっていないことをやりたいと思っていて、そのうえではあまり細かく考えたり、計算しない方がいいというのが僕のモットー。もちろん、そのせいで失敗をすることもありますが、何ごともやってみないと分かりませんからね。今は日本でもオイスターバー事業は過渡期を迎えていて、いろんな企業が参入してきていますが、最後は安全性の高い、高品質なものしか残りえない。だからこそ我々の会社は、食材を仕入れて、調理して、お客さまに召し上がっていただいて、売上を得るだけではなく、そこに行きつくまでの部分に時間とコストをかけているんです。安全に牡蠣を提供しようと思ったら、どうしてもコストはかかってしまうので、普通にやっていては絶対に儲からないビジネスなんですよね。牡蠣のお店は多店舗化が難しいと考えられている中で、我々の店舗は世界最大の規模を誇っています。つまりは、人類史上初のことに挑戦しているんです(笑)」
最後に、これからの会社の展望について聞いてみた。
「創業から16年目の今年を、第二の創業ととらえて、社名を変更しました。これは会社にとって大きなターニングポイントになると思います。将来的には、牡蠣の魅力をもっともっとたくさんの人に知ってもらうためにも、我々のテクノロジーを表現して、お客さまに体感していただけるようなお店がつくれたら……と思っています。牡蠣にはまだ潜在マーケットが残されているので、そこを追求できたらと考えているんです。また、働き甲斐のある職場作りの一環として誠実にがんばっている人が報われ、社員一人ひとりが安心して一生働ける会社にしていきたいと考えています。また、若い人の才能を引きのばしてあげられるような環境づくりも積極的に進めています」
常に新しいことに挑戦し続けようとする吉田氏の瞳は、少年のようにキラキラと輝いている。この輝きこそ、リーダーとしての最大の魅力かもしれない。
【取材店舗】ルーフガーデンオイスターバー GUMBO&
ゼネラル・オイスター グループ
─ 店舗情報 ─
ガンボ&オイスターバー 新宿ルミネエスト店
東京都新宿区新宿3-38-1 新宿ルミネエスト8F
電話:03-5369-5017
オイスターテーブル 上野さくらテラス店
東京都台東区上野公園1-54 上野の森さくらテラス3F
電話:03-3836-3637
オイスターテーブル 浜松町店
東京都港区浜松町1-29-10 東京ラインビル1F
電話:03-3433-8400
カーブ・ド・オイスター 東京駅八重洲地下街
東京都中央区八重洲2-1 八重洲地下街 南1号 外堀地下1番通り
電話:03-3274-3455
ルーフガーデンオイスターバー GUMBO& 渋谷モディ店
東京都渋谷区神南1-21-3 渋谷モディ9F
電話:03-3461-1160
ザ・スチームシーフードポット&オイスターウィング川崎店(4.27 OPEN予定)
神奈川県川崎市川崎区砂子1-3-1 ウィング川崎3F
キンカウーカ 小田急新宿店
東京都新宿区西新宿1-1-3 小田急百貨店 新宿店本館12F レストラン街「マンハッタンヒルズ」
電話:03-3346-0570
ウォーターグリルキッチン 東京ガーデンテラス紀尾井町店(5.10 OPEN予定)
東京都千代田区紀尾井町1-2 紀尾井タワー2F
他、現在32店舗展開中
文:安藤 陽子 写真:小野 順平
2016年04月21日 掲載
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