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株式会社 サードプレイス
代表取締役 岡山 浩之
これまでの板前と、これからの板前は違う仕事人になる。
岡山 浩之 – Hiroyuki Okayama –
1975年生まれ。早稲田実業高校、早稲田大学社会科学部を卒業。学生時代は野球部に所属。1998年4月、株式会社 集英社に入社、雑誌の流通に携わる。しかしサラリーマン生活が性に合わず、29才の時に独立し、父親が経営していた飲食店の一部を買取、飲食業をスタートさせた。現在国内に5店舗、海外に1店舗を展開中。
給料は満たされているのに、気持ちは満たされない。
日焼けした笑顔と元気な声。きびきびとした動きで店内を歩き、スタッフたちとコミュニケーションをとる姿は、社長というより頼れる兄貴的な存在なのかもしれない。学生時代、野球部で活躍し、チームで汗を流し、チームワークで勝つ喜びを経験してきた、アスリートらしい爽やかさが漂う。
早稲田大学を卒業後、集英社に勤務するというエリートコースを歩んできた岡山氏。しかし、本人はサラリーマン時代をこう振り返る──。
「雑誌の流通に関わる仕事だったんですが、何をすれば評価されるのか。それが分からなかったんです。やる気は満々なのに、いつも空回りしているような毎日でした。大手の会社なので、給料もいい。逆にいえば、お金は満たされているのに、気持ちは満たされないという状況だったんです」
日々、働く実感や喜びを感じたい。自分の仕事で人が喜ぶ姿を見たい。そうした気持ちがふつふつとわき上がってきた20代の終わり、父親の会社が経営危機を迎えた。
岡山氏は、その飲食店の一部を買い取るというカタチで飲食業に参入することに。これが、飲食の仕事のスタートだった。そして、徐々に面白みにハマッていく。
「接客サービスに課題がありました。居酒屋という街のコミュニティでありながら、スタッフとお客さまの温かい繋がりがなかった。そこで、私がサービスをすべてやることにしたんです。お客さまのことを、仲のいい先輩だと見立てて、楽しく接客サービスを展開していったんです。サラリーマン時代と違って、朝から深夜まで汗だくになって働いて、責任も抱え込んでいましたけど、楽しかったですよ。しばらくすると数字にも跳ね返ってきて、飲食業って大変だけど、面白いなぁと実感できたんです」
出版界という外の業界から参入し、飲食業の常識や既成概念に頼ることなく、店を再生していった。そのチャレンジと実績が人生のターニングポイントとなった。
「高給をもらっても満たされなかったサラリーマン時代に比べると、飲食業は頑張った分だけ喜びを得られる素晴らしい仕事だと思いました」
早い時期から週休2日制を導入するなど、新規参入の経営者らしい組織づくりも進行している。
業態よりも、コミュニティの場づくりに興味がある。
お得感いっぱいの刺身の盛り合わせと、〆には越後名物「へぎそば」でヘルシーに。毎日でも通える海鮮居酒屋の「魚一」ブランドと、すしをつまみにワイワイと楽しめる「スシイチ」ブランド。このふたつをメインに、業態を展開しているが、岡山氏は業態ありきという考え方ではない。〆の料理にへぎそばを提供していることも、もともと父親がやっていたことを引き継いだのである。
「業態って、ひとつの表現方法みたいなものだと思うんですね。独立したらこんなコンセプトや空間でやってみたいとか。料理はこうで、お皿はこういうの使って、椅子は北欧のデザイナーのものじゃないとダメとか(笑)。そういう願望は、もともと私にはありませんでした。私がやりたいことは、街のコミュニティの場になるということ、それだけなんです。それも、家庭や仕事場では味わえない、本来の自分に戻れる場所。社名にもなっている、サードプレイスという場所をつくっていきたいんですね」
家庭では父親や夫という肩書きをもち、仕事場では役職名で呼ばれる現代人にとって、家でも仕事場でもない第3の場所でくつろぎたいという必要性が高まっている。街場のカフェなども、そういう役割を果たしているが、岡山氏は居酒屋を通してそうしたやすらぎを提供したいと考えているのだ。
「顔見知りのスタッフが笑顔で出迎えてくれて、食べ慣れた海鮮料理があって、近所の知り合いも来ている。ひとり今日あったことを振り返ったり、人とおしゃべりしたり、好きな酒を呑んで、お腹いっぱい元気いっぱいになって帰宅する。そんな場所を提供していきたいですね。それには、スタッフひとりの力では何もできません。チームワークがいちばん必要なんです。私は学生時代、野球を通してチームワークの大切さを学びました。たったひとりの強打者がいても必ずしも試合には勝てないし、逆にひとりひとりがそれほどの実力者でもないのに強い相手を負かしてしまう場合もある。そこにはチームワークという計り知れない力学が働いているからなんです」
これまで評価されてこなかった人が輝ける環境へ。
街でエリアで、長く愛される居酒屋をつくるとき、チームワークこそが最大のテーマだとする岡山氏。現場で働くスタッフたちの人間関係をしっかりと把握し、人と人との相乗効果が上がるように、日々働きやすい環境づくりを進めている。
スキルアップのスピードが速いのも、会社の特長のひとつだ。
海鮮料理をメインにしているため、毎日大量の鮮魚をさばく。経験の浅いスタッフも、鮮魚に触れ、包丁さばきをどんどん教わる。経験の質と量が違うのだと、説明してくれた。
「指導する人を指導するのが私たちのやり方です。指導する人が職人気質の人で、芸術的ともいえる技法で魚をさばけるスキルがあるとします。でも、そういう人が必ずしも、指導者としてのスキルがあるとは限りません。むしろ、『なんで俺の言うことができないんだ!』なんてイライラしたりする(笑)。それでは指導する側もされる側も嫌になってしまいますよね。私たちの現場では、大量の魚をさばくという経験の量と同時に、それを指導する側のスキルを上げるということにも取り組んでいるんですね。それがスキルアップのスピードに繋がっているのだと思います」
独立をめざして入社する社員も多い。しかし、自分が成長することで会社も成長を遂げていると実感できるため、独立することよりも、会社の成長に貢献していきたいと考え方を変えていく社員も多い。
「これまで組織の中に埋もれて評価されてこなかった人が、当社に入ってとてもいきいきとしている姿を見られるのがとても嬉しいです。先日も、アルバイトスタッフが自分の休みの日に、両親を連れて飲みにきてくれて…。すごく嬉しかったです」
大手出版社から飲食業へ──。異業種からの新規参入だからこそ、飲食業の常識や既成概念にとらわれず、いつも自分たちらしさを自問し、チャレンジ精神をもちつづけることができているのかもしれない。
今後も、現代人に必要とされる「サードプレイス(第3の場所)」をチームワークによってカタチにし、地域に根ざしていく。
【取材店舗】築地 魚一 江戸川橋店
株式会社 サードプレイス
─ 店舗情報 ─
築地 魚一 江戸川橋店
東京都文京区関口1-13-14 向井ビル1F
電話:03ー5225ー7323
築地場外食堂 うをいち
神奈川県相模原市中央区相模原2-2-18 SR相模原ビル1・2F
電話:042ー768ー7226
築地 魚一 西葛西店
東京都江戸川区西葛西6-7-2 西葛西メトロセンター3番街
電話:03ー6661ー4422
寿司酒場 スシイチ 天王洲アイル店
東京都品川区東品川2-2-20 天王洲郵船ビル1F
電話:03-5769-0810
TSUKIJI UOICHI COLOMBO
Clock tower 1st floor, No.30, Arcade Independence Square, Independence Square, Colombo 07, Sri Lanka.
電話:+94-11-267-0707
寿司酒場 スシイチ 高田馬場店
東京都新宿区高田馬場3-2-5 ANビルB1F
電話:03-5937-3733
現在、6店舗展開中
文:高木正人 写真:ボクダ 茂
2015年08月20日 掲載
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