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株式会社 ジェイプロジェクト
代表取締役 林 裕二
リーダーとしては目立たず、社員の自主性を育てていく。
林 裕二 – Yuji Hayashi –
1972年、名古屋市生まれ。1997年、有限会社 ジェイプロジェクト創業メンバーとして入社。名古屋本部にて営業部長、社長室長を歴任。東証マザーズ上場に尽力。2003年、初の東京出店に向けて東京支店長就任。「芋蔵銀座店」などの立ち上げに貢献。2012年9月、新田治郎初代社長の後継として、株式会社 ジェイプロジェクト代表取締役就任。
スキルを活かした、新プロジェクトチームが起動。
アスリートのようにきびきびと動き、エネルギッシュに語る。全国に60業態134店舗を展開する企業のトップとしての貫禄など微塵も感じさせず、誰に対しても誠実に対応し、とても爽やかな存在感を放つ。
株式会社 ジェイグループホールディングスの飲食事業を牽引する「株式会社 ジェイプロジェクト」の二代目社長に就任して3年目を迎えた。初代社長と自分との違いについても冷静かつ客観的に分析する。
「現・株式会社 ジェイグループホールディングス代表取締役の新田治郎は、自分の力で何でもカタチにし、結果を出してしまうスーパースターみたいな存在です。現場では器用に何でもこなし、経営者としてもカリスマ性がある。一方、私の役割は社員が自主性をもって活躍できる組織づくりに注力することにあると考えています。そういった組織にしていくことを、新田からも期待されています」
数多くの優秀な「人財」という初代社長から受け継いだ財産を継承しつつ、自分ならではの変化も加えていこうとしているところだ。変化とは、提案型の会社にしていくということだ。
「たとえば新しい社員の中には、管理栄養士の資格をもった人もいるんですね。彼女たちのスキルを活かした、栄養学に基づいた新業態を企画してもらっています。しかもそれは体調管理に気を遣ったメニューを提供するような業態ではなく、エネルギー効果の高い食材を使用することで『明日も頑張ろー!』と言ってもらえるような居酒屋です。そのプレゼンテーションを聞いて、いけそうだと判断できれば、じゃあそれをやってみよう!という方向性ですね。そういうプロジェクトチームをどんどん立ち上げていこうと思っているんです。本部がすべてを決めるのではなく、現場の人たちから企画を立ち上げてもらおうという試みが進行中です」
提案型の会社へ──。社員の自主性を育てようとしている林氏ならではの組織づくりが早くも育ち、カタチになろうとしている。
独立者と現役の社員とのコミュニケーション
創業時からつづき、今も行われていることのひとつに、社員一人ひとりの誕生日に向けて、社長から直筆の手紙が渡されるユニークな習慣がある。
その一枚を見せてもらった。便せん一枚いっぱいに、丁寧に手書きされた文面には、決まり切った定型文など一行もなく、日頃の感謝やその社員に込める想いが愛情をもって記されていた。創業時の数十名にも満たない社員数の時代ならこの習慣が定着するのも分かるが、全国に134店舗も展開する規模になった今でも、林氏がそれを引き継いでいることは驚きに値する。
日々、店舗を回り、店長やスタッフとコミュニケーションを取る。現場に立って、接客をすることもある。現場に配属された新人を見かければ、声をかけてフォローをする。社長に就任した今も、スタッフとの関わりを大切にしている。
「社員たちとは近い距離感でいたいですね。店舗回りをしているとき、新入社員の日々の状況も店長から聞いているんですね。そうすると、今月誕生日のこの新入社員は店長から信頼されていると分かります。手紙には『店長が君を頼りにしてるよ。ぜひ頑張って!』と書けますよね」
社内コミュニケーションは他にも活発に行われている。
10年以上にわたって会社に貢献してきた社員が独立をしたいという場合、独立支援制度の一環として、名古屋の自社ビルの物件を提供。5フロアある「ジェイチルビル」は現在、卒業生たちの独立の場となっている。その店にお客として通う多くは、将来独立をめざす現役社員たちだ。
「『ジェイチルビル』とは、『ジェイプロジェクト』と『チルドレン』を繋げた造語から名付けられました。カウンターとかで焼酎でも飲みながら、先輩である店主にいろいろなことを相談するみたいなんですね。そうすると、こういうところをちゃんと経験しておかないと、あとあと大変だよといったように、とても具体的な話が聞けるわけです。当社ではこのように、独立者と現役の社員との縦のコミュニケーションもごく自然なカタチで盛んに行われているんです」
長い労働時間解消のために、土日休みの店舗も実現。
組織づくりは人づくりであり、「人財」こそがジェイプロジェクト最大の財産であると語る林氏。人が成長できるステージをつくることは、社長として大きなテーマであると考えている。
そのために、社員がそれぞれ次の成長ステージを自分で選ぶための「ターニングポイント」を用意している。
「若いころって、自分が本当にやりたいことが何か分からない状態でいることもあると思うんですね。カフェがやりたいなんて思ってハンバーグを掘り下げていったら肉料理に目覚めてレストランをやりたくなったり。バル業態に配属されたけど、キャリアを積んだら大規模な居酒屋にチャレンジしたくなったとか。ワインに興味をもったり、食材に魅力を感じたり、ブライダルみたいな宴会に方向性を見いだしたり。年令を重ねるうち、キャリアを積むうちに人って変わるものですよね。当社には居酒屋をメインに60もの業態が用意されています。ある一定期間今いるステージで活躍できた人には、タイミングよく次のステージを用意するようにしています」
独立したいのか、本部業務へ進むのか、といった最終的なステージ選びにも、本人の希望を何年かに一度取り入れる仕組みをつくっている。
休暇整備にも積極的だ。人財不足が叫ばれている飲食業界で、新しい才能が集まるような、魅力ある業界になることを模索中である。そのための施策が、サラリーマン並みの休暇環境だ。
「土日が定休日の店舗を少しずつですが実現させています。シフトで休むのではなく、店舗そのものを定休にすることで、週末は気兼ねなくリフレッシュしたり家族と過ごし、また月曜日から仕事に励む。長い目で見れば、減益ではなくなると考えています。こういう環境を業界の中で確立していきたいですね」
飲食業の特長でもある長い労働時間を、自分たちから解消していこうという強い意思を感じる。もしかしたらそこには、上場会社として業界を牽引したいとの使命感も持ち合わせているのかもしれない。
「就任して3年でこんなこと言うとまだ早い!と怒られるんですが(笑)、三代目の社長へ引き継ぐ土台づくりも私の使命だと思っています。当社は、すべての人にチャンスがある会社。誰もが輝くことのできる会社です。私も人づくり、会社づくりに精一杯力を注ぎたいと思います」
【取材店舗】日本橋室町 豊年萬福
株式会社 ジェイプロジェクト
─ 店舗情報 ─
日本橋室町 豊年萬福
東京都中央区日本橋室町1-8-6
電話:03-3277-3330
芋蔵五反田店
東京都品川区東五反田1-26-14 アトレヴィ五反田4F
電話:03-5437-0800
ほっこり有楽町店
東京都千代田区有楽町2-3-5 aune有楽町9F
電話:03-3569-2700
芋蔵横浜鶴屋町店
神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町2-15 CRANE YOKOHAMA3F
電話:045-290-9900
The Oyster House Koshigaya
埼玉県越谷市レイクタウン3-1-1 イオンレイクタウンmori1F
電話:048-986-2223
GINZA我歩
東京都中央区銀座8-3 銀座コリドー街
電話:03-6252-3444
現在、134店舗展開中
文:高木正人 写真:ボクダ 茂
2015年07月02日 掲載
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