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株式会社 ザガット
代表取締役 栗原 秀輔
専門店としての誇りを持って学んでもらいながら
飲食の仕事の楽しさを知ってもらいたい
栗原 秀輔
– Shusuke Kurihara –
1983年生まれ、東京都出身。小学生時代は鹿児島県指宿市で過ごし、野球に専心する。中学校時代には全国大会出場をも果たす。高校卒業後も社会人野球を続けながら、和食店で修業をしてふぐの調理師免許を取得。そして2007年、一卵性双生児の中俣伸輔氏と株式会社 ザガットを創業する。現在、現場は取締役副社長の中俣氏に任せ、栗原氏は代表取締役として組織全体を見ることに専念しつつ、従業員たちとコミュニケーションをとって店舗を経営している。
2023年2月掲載
酒蔵の息子として育った野球少年が、
飲食の世界へと飛び込む
銀座の一等地でのどくろ専門店を展開している株式会社 ザガットの代表取締役、栗原氏。今は素材へのこだわりをとことん追求している栗原氏だが、学生時代は飲食とはまったく違うものに夢中になっていたと話す。
「小学生のときからずっと野球をやっていました。僕には双子の弟がいるんですが、日本初の双子プロ野球選手にしたかったみたいなんです、親が(笑)。もちろん僕らも野球が好きでプロを目指していたんですが、僕が肘を痛めてしまって野球の道はあきらめました」
それまで野球だけを見てきた栗原氏がなぜ飲食の世界を歩むことにしたのか。そこにも実は親の影響があった。
「もともと父親が飲食の仕事をやっていたし、母親は酒蔵をやっていたんです。だから飲食の世界は割と身近な存在でした。野球と飲食はまったく別の世界ですが、そこに迷いはありませんでした。20歳くらいのとき、親の店を手伝ったあと、フグ料理のお店で修業して本格的にフグの道に入りました」
迷わず飲食の道に進んだ栗原氏だが、そのそばにはいつも双子の弟がいたと話す。
「弟はケガをしていませんが、一緒に野球をやめて、そこから先もずっと一緒でした。23歳で僕が独立するときももちろん一緒。もはや一心同体というんですかね(笑)。創業当時はケンカもよくしていたんですけど、会社がだんだんと大きくなる中で、お互いの役割分担が明確になっていくとケンカなんてものはなくなりました。もちろん、意見し合うことはありますけどね。良い摩擦が起きるというのは、双子ならではの利点かもしれません」
ちなみに会社名の“ザガット”はのどぐろや和食とは全く関係のない言葉のように思えるが、これはどこからきたのか聞いてみると。
「実は独立をする前に、海外でいろんなレストランを見て回ったんです。そのとき僕が持っていた本が“ザガット・サーベイ”というミシュランのようなレストランガイド本だったんです。いずれは海外にも進出したいと弟とも話していたので、そこからもらいました」
いつかは海外に……そんな思いを込めた会社名を持つザガット。しかし独立してから一度大きな壁にもぶつかっている。
「リーマンショックから東日本大震災のときですね。たしか、会社ができて2年目だったかな。今は、現場を弟が回して僕が経営を担っているんですが、当時はまだちゃんと役割分担もできていなかったので、現場も経営も両方やっていたんです。だからこそ、壁にぶつかったときいろんな要素がふりかかってきてしまって大変でした。1人ですべてを抱え込むのは厳しいということを確信した時期でもありましたね」
専門店としてのこだわり、
そして人を育てる上でのこだわり
和食の中にもいろいろなメニューがあるが、栗原氏は専門店としてのこだわりに大きな誇りを持っている。その理由はというと。
「いろんなことを手広くやるよりも、ひとつのことを突きつめてやるというのが僕にとってのこだわりです。突きつめることによって強いお店になるんじゃないかと考えているんです。これはかなり経営者目線かもしれませんけど(笑)。今のうちのお店は全店舗、自転車で回れる範囲内にあるんです。だから社員とのコミュニケーションもとりやすく、距離も近い。そして、すべてが手の届く範囲内にあるからこそ、狭く深く注意深くこだわりを追求することができるし、質も上がっていくと考えてます。まかせられるところは現場にまかせますが、経営者として自分の目でちゃんと見るということもひとつのこだわりだと思います」
ザガットでは、新卒1年目の社員が刺身を切るなど、早い段階で専門的な仕事を担当させている。そこにも栗原氏のこだわりがあった。
「普通の和食のお店だと3年修業してからじゃないと担当させてもらえないようなことも、うちでは1年目でやってもらいます。わりと早い段階でいろいろなことを身をもって経験させることってすごく大事だと思うんです。僕が修業していたお店はわりと厳しくて、刺し場に立つまで何年……みたいな暗黙のルールがありましたが、早く覚えてもらえれば即戦力になる。即戦力になる人数が増えれば、会社の規模も大きくなるし、強くもなる。だからずっと同じ店舗で働くのではなく、週に1回は違う店舗で働くという仕組みもとっています。臨機応変に働ける人間になってほしいですし、客観的に自分の仕事を見れるようになってほしいんです。会社自体は専門店ですけど、働く人間にはひとつのことではなく、いろんなポジションを担えるスペシャリストになってほしいです。とはいえ、基本は魚のスペシャリストであることが大前提ですけどね。だから仕入れも立候補形式で行かせるようにしています。仕入れから調理まで学べるというのはうちの強みだと思います」
ザガットは従業員の正社員比率が70%で、定着率もとても高い。そのことについて栗原氏はどう考えているのか聞いてみた。
「うちは日祝日は完全定休日にしていますし、店舗によっては土日が休みのところもあります。僕自身、子供がいるので正直土日は休みたい(笑)。でも、なぁなぁな感じで休みをつくると土日祝関係なしに働くことになる人間がでてきてしまうんです。それでは休みの意味がありませんから、年末年始もしっかりと休ませました。いつ休みになるか分からずに働くほうが、決まった休みがあるほうが効率も上がると考えたんです。つまりメリハリですね。働くときはがっつり働くけど、休むときもがっつり休む、それが大事ですね。従業員側に立って考えたことですが、僕もそのほうが休めるのでいいんです(笑)。だからこその定着率の高さだと思います」
付加価値の高いお店に成長させて、
海外へ進出するのが今後の目標
ザガットといえばやはりのどぐろ専門店のイメージが強い。マグロでもなくフグでもなく、なぜのどぐろだったのか。
「10年前くらいに弟の副社長が築地で買い出しをしているとき、マグロならこのお店、カニならこのお店という印象がある程度決まっていることに気づいたんです。当時はまだのどぐろに目をつけているお店はなくて穴場だったんです(笑)。そのあとのどぐろが高級魚としてどんどん注目を集めたことはラッキーでしたね。時代がついてきた!という気持ちです。いろんな魚に手を出すより、ひとつの分野で一番をとるということに付加価値があると僕は考えています」
定着率の高い従業員が多い中、今後はどんな社員と働いてみたいのか……を聞いてみると。
「不器用で真面目な人! ですかね。不器用だと和食の世界では技術が上がるのに多少時間がかかるかもしれませんが、我々の店は専門店なので“繰り返す”作業が多いんです。だからこそ、不器用なりに続けていけば必ず質は上がります。変に器用すぎて適当になるよりも不器用で真面目な人のほうが一緒に働いていて信用できる気がしますね」
専門店としてのこだわりを貫いている株式会社 ザガットの栗原氏。では今後はどのような展開を考えているだろう。
「今後は実家の酒蔵との関係をもっと強くして、お酒にも力を入れていきたいですね。オリジナルの焼酎も作っているんですけど、社員が鹿児島に行って実際にお酒を作るんです。コロナ渦ではそれができなくなっていましたが、また再開したいです。そうすることでうちのお店から酒造りの人間も出てくるかもしれませんし、専門の力を持つ人間を育てたいです。そしてもちろん、海外進出の夢も忘れてはいません。日本でのどぐろの一番をとって、それをブランド力にして海外にお店を展開したいですね。前はニューヨークにと考えていましたが、今注目しているのはアジア圏です!」
最後にこれから飲食を目指す人にメッセージをお願いした。
「飲食の世界に入るのであれば、深く飲食のことに関わってもらい、その楽しさを知ってもらいたいですね。例えば、酒造りから学べれば、自分たちの作ったお酒をお客様に提供できるのでその納得感を味わえます。また、自分たちで仕入れた魚をお客様に提供できればやりがいを感じることができます。そんな納得感とやりがいを楽しさにかえて働けるのが飲食の仕事の醍醐味だということを知ってもらいたいです。僕も、より付加価値の高いお店をつくるために、変に安売りをするのではなくお客様にちゃんと価値が伝わるような取り組みを行ったり、同じ考えを共有できる社員を育てていこうと思っているので、興味があればぜひ株式会社 ザガットにも目を向けてみてください」
東京都中央区銀座3-14-17 kobikissGINZa2F
(取材店舗)
株式会社 ザガット
─ 店舗情報 ─
魚の中俣 銀座
住 所:東京都中央区銀座3-14-17
kobikissGINZa2F
電 話:050-5385-3419
現在、上記含め8店舗展開中
文:安藤 陽子 写真:吉川 綾子
2023年02月16日 掲載
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