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飲食店専門弁護士の第一人者、石﨑冬貴の実録連載!
回転寿司チェーンの「不正競争防止法違反」について
「秘密管理性」が証明され刑事事件に発展しました。
今回は、「かっぱ寿司の不正競争防止法違反」についてです。
2022年9月、かっぱ寿司を運営するカッパ・クリエイト(株)の社長が、以前勤めていた「はま寿司」の営業秘密を持ち出したとして、不正競争防止法違反で逮捕されました。
飲食業界は競争が厳しい業界ですから、競合他社の情報を引き出し、徹底的に分析するのは当然に行われている行為で、現実に問題になるケースもよくあります。ただ、今回のような「トップが逮捕される」というのは極めて珍しいケースです。なぜこのような大きな事態になったのでしょうか。
企業秘密は、不正競争防止法によって保護されており、これに違反した場合は、10年以下の懲役、もしくは2,000万円以下(海外使用等に関しては3,000万円以下)の罰金、またはその2つの併科という非常に重い罰則があります。ただ、現実問題として、刑事事件まで至ることはそう多くありません。私も、秘密を洩らした方と洩らされた方の双方から相談を受けることがありますが、大抵は民事事件としてどうかという程度にとどまります。その理由は、「秘密管理性」と証拠の有無が問題となるからです。
「秘密管理性」というのは、その情報が「秘密」として管理されていたかという事なのですが、これが意外とハードルが高いのです。昔であれば、「社外秘」などと書いたファイルなどがあり、物理的に可視化されていましたが、現在はほぼ全ての情報がデータ管理されています。非常に重要な情報であっても、社内では情報に多くの従業員がアクセスできるようになっていたり、パスワードの管理もいい加減になっている場合が少なくありません。そうすると、そもそもその情報は秘密として管理されていたのか疑問の余地が出てくるのです。また、実務的な観点でいえば、証拠の有無が極めて重要になります。明らかに情報が漏洩されていたとしても、それが、誰によってどのようなルートで持ち出されたのかが証明できなければ事件化できません。極端に言うと、情報を全て暗記して持ち出してしまえば証明しようがないということになります(情報量的に不可能ですが)。実際問題として、同業他社に移籍しても、当然、元の会社でのノウハウは頭の中に残っていますし、それを使い、次の会社で業務を行うことになりますが、それがすぐに問題になることはありません。
今回の事件では、仕入価格などの情報が持ち出されましたが、このデータはアクセス権限を持つ従業員が限られていた他、パスワードも掛けられており、営業秘密として厳重に管理されていたようです。さらに、データは元部下からメールで受け取っており、明らかに証拠が残っています。このような理由から、本件は事件化に至ったのだと思われます。さらに、担当者が個人の利益の為に行ったのではなく、代表者が直接指示していた事や、情報の重要性から、逮捕にまで至ったものと思われます。
冒頭でも書いたとおり、日本では、競合から情報を入手するというのは珍しくありませんが、それは、適正な競争の範囲でなければなりません。今回のケースを踏まえ、これまで以上に、各企業が情報管理を徹底する必要がありそうです。
2022年10月19日 掲載
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飲食店専門弁護士 石﨑 冬貴(Ishizaki Fuyuki)
1984年生まれ。東京都出身。東京弁護士会所属。
一般社団法人フードビジネスロイヤーズ協会代表理事。日本料飲外国人雇用協会理事。
賃貸借契約から、労務問題、風評被害、漏水まで、飲食店の法務を専門的に取り扱う弁護士の第一人者。
法律事務所フードロイヤーズ〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-2-2東宝日比谷ビル9階
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