予約の無断キャンセル、理不尽なクレーム、器物破損等々…
お客との様々なトラブルに対し 「泣き寝入りする必要はない」、
「お客と店は平等」を掲げ、様々な依頼に取り組み続ける
飲食店専門弁護士の第一人者、石﨑冬貴の実録連載!
お客のパソコンにコーヒーが!DATA代も賠償!?
お客の過失もあり、賠償も「修理代」までが妥当です。
今回のテーマは、「お客の物品が壊れた場合の賠償」についてです。
スタッフのミスで服やカバンを汚してしまうというのはよくある話で、お客は「新品に買い替えてくれ」と主張し、お店側は「修理やクリーニング代でいいのでは」と揉めるケースが大半です。法的には修理やクリーニングが原則です。もちろん、匂いが取れない、修理できない、という場合はその限りではありません。また、修理代金とその時点での商品時価(物の価値は経年劣化していきます)を比べ、時価の方が低ければ、その時価相当を払えばよいということになります。
よほど高いブランド品でない限り、時価を調べる労力や、やり取りの手間を考え、“いいところ”で折り合いが付くのが通常です。
では、壊れたものがパソコンや思い出の品など、その物自体の物理的な価値だけでは評価できない場合はどうでしょうか。例えば、喫茶店でスタッフがコーヒーを机に置いたところ、お客が気が付かずにコーヒーに触れ、パソコンにこぼしてしまった場合です。お店としてはお客さんが自分でこぼしたものの、「まあしょうがない」ということでパソコン代は払うことに。しかし、お客は「このデータはウン百万円もする貴重なデータだから、データ代金も支払え!」と主張するようなケースです。
このような場合、データに高額な価値があるというのは通常予見できませんし、貴重なデータをバックアップも取らず、破損の危険性がある外部(しかも多くの人が出入りし、水物も扱う飲食店)に持ち出すというのは、お客さん側の過失が大きいと言えます。また、データそのものの価値をどう評価するかという問題も出てきます。仮想通貨のようなものであればまだしも、プレゼン資料とか写真といったものになると、あくまでも個人の主観的な価値判断であり、基本的には修理代を払えばよいということになるでしょう。
他、よくあるのが慰謝料です。物が壊れた場合の慰謝料は、その物品が財産的価値以外の精神的価値があったという特別な事情がなければ認められません。逆に言えば、修理では賄えないほどの損害が出ないといけないということです。例えば、遺品が壊れた、ペットがケガをした等のケースに限られますので、ほとんどの場合は認められないと考えた方がよいでしょう。
2021年02月04日 掲載
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飲食店専門弁護士 石﨑 冬貴(Ishizaki Fuyuki)
1984年生まれ。東京都出身。東京弁護士会所属。
一般社団法人フードビジネスロイヤーズ協会代表理事。日本料飲外国人雇用協会理事。
賃貸借契約から、労務問題、風評被害、漏水まで、飲食店の法務を専門的に取り扱う弁護士の第一人者。
法律事務所フードロイヤーズ〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-2-2東宝日比谷ビル9階
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