予約の無断キャンセル、理不尽なクレーム、器物破損等々…
お客との様々なトラブルに対し 「泣き寝入りする必要はない」、
「お客と店は平等」を掲げ、様々な依頼に取り組み続ける
飲食店専門弁護士の第一人者、石﨑冬貴の実録連載!
従業員が売り上げを横領したのでは?
店側が「間違いが起きない環境」を作る事です。
今回のテーマは「従業員の横領」です。
飲食店経営者であれば、一度は頭を抱える問題です。飲食店は基本的に現金商売であり、多数の従業員が同時に働いているため、どうしてもお金のトラブルが起きやすい環境です。
この問題が難しいのは、誰がいくら着服したか見抜くのが至難であるという点です。私自身、横領については多くの相談を受けていますが、事後的に対応することは容易ではありません。「被害届を出したい」という店主もおられますが、証明が難しく、よほど分かりやすい証拠がない限り警察も被害届を受理しません。何年も準備し、ようやく警察が動いたとしても起訴されるのは実際の被害金額のごく一部というのが一般的な結果です。
私自身、店からの依頼で疑わしい従業員と対峙したことが何度もありますが、明らかに数字が合わず状況的にその人しか考えにくいという状況でも、「心当たりがない」、「お客さんが注文をキャンセルしたと思う」、「レジの操作を誤って履歴を全て消してしまった」、「作り間違えたので取り消した」など、完全に否定できない反論をしてきます。明らかに虚偽と思われる回答でも、その可能性を否定することができないのです。相手が全面的に認めればいいのですが、そのようなことは稀で、実際には責任追及が難しいのがほとんどです。
少しドライに聞こえるかもしれませんが、店側が「飲食店における横領や窃盗は避けられない」と認識し、予防策に重点を置くことです。「従業員を疑うようなことはしたくない」という意見もありますが、従業員を信頼することと、丸投げして盲信することは違います。お店は従業員を違法な行為に走らせない設備や環境を作り上げる義務があるのです。例えば「監視カメラをレジに向けて設置する」、「売上の管理や入金は必ず二人でチェックさせる」、「本部で各店舗の売上げを毎日チェックする」などやれることはたくさんあります。私が経営する飲食店でもレジ付近に防犯カメラを設置し、録画しつつリアルタイムで遠隔操作できるようにすることによりこれまで会計上の問題が起きたことはありません。
従業員に違法な行為をさせないためにもしっかりと予防策を講じることを強く勧めます。
2020年10月01日 掲載
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飲食店専門弁護士 石﨑 冬貴(Ishizaki Fuyuki)
1984年生まれ。東京都出身。東京弁護士会所属。
一般社団法人フードビジネスロイヤーズ協会代表理事。日本料飲外国人雇用協会理事。
賃貸借契約から、労務問題、風評被害、漏水まで、飲食店の法務を専門的に取り扱う弁護士の第一人者。
法律事務所フードロイヤーズ〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-2-2東宝日比谷ビル9階
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