独立希望者必見!個人店オーナーからの熱いメッセージ
あつあつ リ・カーリカ
オーナーシェフ 堤 亮輔
スタッフが長く働ける会社を。
“人づくり”も、店づくりの大事な要素です
堤 亮輔(Ryousuke Tsutsumi)
1978年、東京都生まれ。21才で料理の道へ。イタリア・トスカーナで修業、帰国後は都内のイタリアンやフレンチ、和食を経験。現在は学芸大学、都立大学で3店舗を展開。週に一度、欠かさず三浦半島に食材を買い付けに行くなど、素材へのこだわりは強い。
2020年5月掲載
激戦区・学芸大学の人気店。”人の強さ”が店の強さ
東急東横線沿線の学芸大学駅と都立大学駅。閑静な住宅街が広がるベッドタウンだが、一方ではハイレベルな飲食店が多く軒を連ね、舌の肥えた住民も多い街だ。そんな激戦区で繁盛店を展開するグループが、タバッキ。学芸大学の「オステリアバル リ・カーリカ」と「あつあつ リ・カーリカ」、都立大学の「カンティーナ カーリカ・リ」の3店舗を運営する。いずれも、素材にこだわる上質なイタリア郷土料理と自然派ワインが、肩ひじ張らずにカジュアルに楽しめるバル。それぞれ地域住民を中心に支持され、連日満席となる繁盛ぶりだ。今やこのエリアで飲み歩く人なら、誰もが知る存在と言っても過言ではない。同社を率いる堤亮輔氏は、「当社の強さは”人”にある」と話す。
「料理の味づくりや空間づくりはもちろんですが、”人づくり”も、店づくりの大事な一要素。スタッフ全員が同じベクトルで働くために、在籍する22人のスタッフは全員正社員雇用。人件費はかかりますが、社員として本気で取り組んでほしいという思いの表れです」
安心して長く働ける会社を。
まずは3店舗展開を目標に
堤氏が飲食業の楽しさを知ったのは、19才、大学在学中に経験した飲食店のアルバイトだ。そのまま料理の道を究めようと21才のときに大学を中退、イタリア・トスカーナへ渡った。現地で武者修行ののち、帰国後は都内のイタリアンやフレンチ、和食で料理の経験を積んでいった。駒沢大学の「トゥ セイ グランデ」では店長を任され、中心となって運営を行った。
「何かを作ることが好きで、店を作りたいと当初から独立を目指していました。また、やるならスタッフが安心して長く働ける企業にしたいという思いがありました。飲食業界は楽しいこともたくさんありますが、どうしても労働時間が長く、苦労することもあった。そんな経験をもとに、よりよい環境を作りたかったんです」
都心からやや離れたベッドタウンである駒沢大学で働くうち、独立する際は、お客様との距離が近く、地域密着で営業ができるベッドタウンがいいと考え始めた堤氏。人の多さや街の雰囲気を勘案し、学芸大学で出店を決めた。当時、周辺にはかしこまった高級イタリアンは多かったものの、カジュアルに使えるイタリアンは少なかったことに着目。上質な料理と自然派ワインを、ワイワイガヤガヤとした雰囲気で楽しめる店として、2013年、「オステリアバル リ・カーリカ」をオープンした。狙い通り、オープン直後から大盛況。現在に至るまで、連日、満席の2回転という状態が続いているという。
「独立以前から、人のつながりは大切にしていましたね。仲間の新店舗オープンや周年記念の折には必ず祝い花を贈っていたら、”お花貧乏”になったほど(笑)。その縁から、逆に私が開業した際には、多くの祝い花が集まり、店の前が花だらけで道行く人の注目の的に。それが、地元のお客様が来てくれるきっかけになりました。もちろん、その仲間達は開店祝いにも駆け付けてくれた。オープン景気が終わった後も、おかげ様で売上は落ちることなく推移していきました」
その勢いに乗り、2年後の2015年には、都立大学駅高架下の商業ゾーンに「カンティーナ カーリカ・リ」をオープン。コンセプトは変わらず、カジュアルな雰囲気でイタリアンと自然派ワインを楽しむ店だ。都立大学の地でも地域の人々の心をつかみ、人気店へと成長。さらに、2年後は「オステリアバル リ・カーリカ」のすぐ近くに「あつあつ リ・カーリカ」もオープン。カウンター席に加えて立ち飲みスペースも設けて、わずか7坪の小さな店内に、夜な夜な多くの人がひしめき合う熱気あふれるバルだ。既存2店舗は予約がとりにくい状態だったこともあり、同店もあっという間に繁盛店に。こうして、独立から順調にステップを踏んできた。
「当初の目標である、スタッフの労働環境を整えて長く働ける会社にするには、まずはしっかりと利益を出せる体制であることが大前提。そのためには3店舗を出店し、安定した売り上げを作ろうと考えていました。もうちょっと時間がかかるかと思いきや、想像以上に早く2店舗目、3店舗目を出店することができましたね。それも、スタッフがどんどん育ち、店を任せられるまでになったから。1店舗目を安心して任せられるスタッフが出てきたので、それまで私が担っていた役割を彼らにスライドし、2店舗目の立ち上げに注力。3店舗目も同様の流れ。無理な展開はせず、あくまでスタッフの成長に合わせて会社も大きくしていきたい方針です」
堤氏が考えるオーナーシェフとしての心得
01 人とのつながりは大切にする
02 笑顔でいること
03 立ち止まらず、困難にも挑戦し続けること
難しいオファーも断らない!挑戦こそが強いチームの秘訣
このタバッキの”人の強さ”はどのように培われているのだろうか。そして、当初の目標である3店舗を達成したいま、堤氏は今後の展望をどう描いているのだろうか。
「私達は基本的にオファーを断らないんです。難しいことにもどんどんチャレンジするので、そのたびにレベルアップしていく。例えば、デパートの催事のオファーが来れば、店舗営業の傍ら、どう運営するのかを皆でアイディアを出し合い、トライアンドエラーを繰り返しました。そういった経験の積み重なりによって、今のチームがあるのではないでしょうか。新入社員が入った際も、その人の個性を伸ばしながら成長や活躍ができるよう、ワークショップも行っています。今後も、私ではなくスタッフが主体となって店を作っていきたい。働くうえで、”スタッフが能動的に作った店”というのが大事だと思います。長年、勤務しているスタッフも多いので、彼・彼女たちがこれまで培った知識や技術を活かした店を作れれば。独立支援に近いですね。今考えているのが、オーセンティック寄りのワインバー。勤続7年間で、卓越した接客力とワインの知識を持っているスタッフがいるので、彼女を中心に、このエリアで作れればと思っています」
あつあつ リ・カーリカ
住 所:東京都目黒区鷹番2-20-4
電 話:080-4858-2233
時 間:18:00~24:00(L.O.)
定休日:無休
交 通:東急東横線「学芸大学駅」より徒歩2分
文:大関 愛美 写真:ボクダ 茂
2020年05月21日 掲載