独立希望者必見!個人店オーナーからの熱いメッセージ
大衆料理 とり吉 市川店
店長 小峰丈晴
この仕事の魅力は人とつながれること。家族のような仲間を増やしていきたい。
小峰丈晴(Takeharu Komine)
1984年、千葉県生まれ。大学卒業後、株式会社てっぺんに入社。教育制度や経営理念に大きな影響を受ける。2008年、父の他界を機に「大衆料理 とり吉」を受け継ぐ。兄、姉とともに店を盛り立て、2013年には本八幡店を出店。現在、市川店の店長を務める。
2018年6月掲載
創業40余年、地域の人々に愛され続ける大衆料理店
1975年の創業以来、「大衆料理 とり吉」は地元・市川の人々に愛され続けている。2008年には世代交代を行い、兄弟で店を切り盛りしてきた。現在、弟の小峰丈晴氏は市川店店長として腕を振るっている。
「客層がとても幅広いんですよ。新しいお客様も増えてきています。若いスタッフが多くなったのもあり、若い人が店に入りやすくなったのかもしれませんね。40年以上店をやっていると、自分が小学生くらいのときから顔見知りの方も来られます。父が他界したときには、常連のお客様から『いろいろやりたくなっても3年は我慢しろ』と言われたものです。当時はまだ技術も知識もなかったので、その言葉どおり極力変えないように努めてきました。今は逆、兄が店長を務める本八幡とは異なる自分の色を出すようにしています」
2013年に本八幡店を出店。市川店の創業40周年にあたる2015年には、ファサードをリニューアル。ユニフォームを変更したり、店舗のロゴマーク作成にも取り組んだ。
「昭和の時代は料理が美味しければそれだけでお客様にいらしていただけました。今の時代の人は目から入る情報が多いですから、見た目も重視しなければなりません。スタイリッシュで若者向けの本八幡店と違って、こちらは大衆的ながらも格式を持たせるようにしています。あとは国産ワインにスポットを当ててワインのメニューを充実させたり、和食では使わないような素材を取り入れた新メニューを開発したり、宮崎から空輸で魚を送ってもらったりと、仕入れ先も新しく開拓しています」
歴史のある店だからといって、伝統の上にあぐらをかいたりはしない。常にチャレンジを続ける小峰氏の姿勢があってこそ、活気あふれる繁盛店であり続けられるのに違いない。
「てっぺん」での濃密な1年半が
逆境を乗り越える支えになった
幼少期より、小峰氏は店を手伝いながら板前として立ち働く父の姿を見ながら育った。飲食の道を選んだのは自然な流れといえるだろう。
「店で働いているときの父はスターでした。小学生の頃、絵に描いた将来なりたい職業は父の板前姿。そういうのも心に残っていたのかもしれません。手伝わせられるのがいやで反発した時期もあったけれど、大学を卒業するときには店を継ごうと決めていました。ただ、兄はすでに割烹料理店で働いていたので、自分は全く違う道に進もうと考えました」
最も勢いのあった「てっぺん」に入社。大学新卒第1号の社員として、先輩方から多大な薫陶を受けた。
「初期のメンバーがちょうど独立するタイミングで、ここはなんなんだというくらい活気がありました。入社すると店長は『よし来た!』という感じで、お店のことだけではなく、これからの日本をどうするのかまで1、2時間熱いトークを聞かされました。周りは皆、志の高い方ばかり。日本のために何ができるかを、いつも考えているんです。飲食業としてというより、人としてどうあるべきなのかという精神を学びました」
1年半の短くも濃密な月日を小峰氏は「ドラゴンボールに出てくる”精神と時の部屋”のようでした(笑)」と振り返る。父の急逝により、店を継ぐことになってからも、このときの経験が大きな支えとなっていった。
「何もできないのに何でもできるような自信をつけ、意気揚々として実家に戻ったのですが、修業を積んできた5才上の兄とは明らかな差がありました。たとえば千切りをしても、クオリティーもスピードも追いつけない。ボロクソに言われて感情的になり、ぶつかりあったりもしました。それでも、耐えて打破できたのはあきらめずにやり続ければ必ずできるようになるという『てっぺん』での教えがあったからだと思います」
強力なトップを失って何とかしなければという状況の中、当時のスタッフは兄、姉、叔父などほぼ身内だけ。兄弟という親密な関係であればこそ衝突することも少なくなかったが、本八幡店の出店によりそれぞれ活躍するステージが拡大。目指すべきゴールもくっきりと見えてきた。
「兄とよく話すのは、家族を増やそうということ。実の家族もそうですが、『家族のような仲間ができる店にしたいね』と話し合っています。この仕事の魅力はやはり人とつながれることじゃないですか。普通に生活していたら会えない人たち、上は年配の方から下は学生まで出会える。これまでいろいろな経験を積んできた人、これからやってやるぞという人、たくさんの人たちとつながっていきたいですね」
小峰氏が考える経営三箇条
01 礼儀礼節を大切に
02 作業ではなく仕事をする
03 みんなでやろう!
新たなステージをつくるため いろいろな業態にチャレンジ
人とのつながりを何より大切にしてきた小峰氏が日ごろ、よく声がけする一言は「みんなでやろう!」。その声に応えるかのように、若いスタッフも成長を遂げてきている。
「アルバイトの卒業の会に社会人になったメンバーも呼ばれていたのですが、その人がアルバイトリーダーにこう言ったそうです。『最後までやめるなよ。俺は最後までとり吉にいたおかげで、職場ではすごく仕事ができるやつになっているんだぞ』と。何度もやめたいと訴えていたアルバイトリーダーが『先輩に言われました』と報告してくれたんですよ。言ってくれたほう言われたほう、どちらもありがたいですよね」
人と人との深い絆は未来へつながる――「『とり吉』が『てっぺん』みたいなことになってきているのかなとうれしくって」と笑顔を見せる小峰氏。次のステップに向けて、確かな手ごたえを感じているようだ。
「父の形見のようなこの店を大いに活用させていただき、兄と一緒に発展させていきたいと考えています。今は2店舗とも和食をベースにした居酒屋業態の店ですが、和食だけにとらわれず、いろいろな業態にチャレンジしたい。新しいブランドの立ち上げも視野に入れています。それもこれも、今働いてくれているスタッフたちのステージをつくることになるからです。社員がこれをやりたいと言ったとき、叶えられるような体制をつくっていきたいですね」
大衆料理 とり吉 市川店
住 所:千葉県市川市市川南1-1-1-110 ザ タワーズ イースト1F
電 話:047-325-4129
時 間:17:00~24:00
定休日:木曜日
交 通:JR総武線「市川駅」南口より徒歩1分
文:西田 知子 写真:ボクダ 茂
2018年06月07日 掲載