独立希望者必見!個人店オーナーからの熱いメッセージ
MAIN
代表取締役 吉澤治郎
日本の飲食業界は世界一である そんな誇りを若い人たちに伝えたい
吉澤治郎 (Jiro Yoshizawa)
1969年、神奈川県横須賀市生まれ。洋食レストランを経営する両親のもとに育ち、大学卒業後は大手電機メーカーに3年間勤務。その後、友人らと藤沢市でレストランバーを立ち上げるが、36歳のときに家業を継ぐ。2017年6月「MAIN」をリニューアルオープン。
2017年8月掲載
物心がついたときから飲食は自分にとってすごく身近な存在
今や数多くのカフェやレストランが海沿いに並ぶ、湘南の地。中でも観光客がたくさん集まる稲村ヶ崎の先駆け的レストランとして1968年に創業した「MAIN」は、今年の6月に全面リニューアル工事を行ったばかりだが、2Fに設置が予定されている温泉については現在も工事が続いている。先代から店を引き継いだ、現オーナーの吉澤氏は「MAIN」の全席オーシャンビューの店内から眺める景色の美しさとこだわりの創作料理にはなみなみならぬ自信を持っているという。そんな彼は、小学生のときにすでに自分がいつかこのお店を継ぐのだろうと漠然と思っていたと話す。
「お店の手伝いは、小学生のころから大学生になるまでずっとしていました。していた……というよりは、父に強制的にやらされていたんですが(笑)。長男だったので、いずれは自分がお店を継ぐんだと、幼いながらに考えてはいましたが、小学生のときは大工さんになりたかったし、高校のときはサーファーだったので、世界でサーフィンをしながら生きたいと夢見ていました。大学では、バイトをかけもちして貯めたお金でサーフトリップをしたりして(笑)。生意気な大学生でしたね」
しかし吉澤氏は大学卒業後、実家のお店を継ぐわけでも、世界を駆け巡るサーファーになるわけでもなく、大手の電機メーカーに就職。ここで3年間働くことになるが、会社を辞めるきっかけは父だった。 「父からお店を手伝ってくれと連絡がきたんですが、タイミングが合わなくてその話は流れてしまったんです。でもせっかくだから、仲間4人でお店をやろう……なんて盛りあがって、藤沢でレストランバーをはじめることになったんです。当時は夜のお店ブームみたいなのがあって、意外と人気はありました」
そして、藤沢で約11年もの間、働いたのち、吉澤氏にまた父から連絡が入ることとなる。
父のレストランを引き継いで
自らがフロアに立つことを決意
父からの2回目のSOSが届いたのは、吉澤氏が36才のとき。藤沢でやっていたレストランバーを閉じて、最初に彼が引き継いだのは「MAIN」の系列店である「ヴィーナスカフェ」だった。
「藤沢のお店で働いたメンバーを連れてヴィーナスカフェに行ったのですが、思いのほかすぐに繁盛店にすることに成功しました。そして平成12年のとき、父が偶然、温泉を掘り当てたんです。しかし、建設も半ばにして父は亡くなってしまったので、残念だったと思いますね」
吉澤氏の父は、経営者ではあったが、フロアに立つ経営者ではなかった。ではなぜ、吉澤氏自身は、フロアに立つことを選んだのか。
「やはり、クオリティをあげるためには自分が直接現場を見ていないと……というのがありました。父のときは、働き手も多かったし、時代もよかったから、経営者がお店に立つ必要がなかったのかもしれませんが、今は違いますからね。それに、お店に立つと毎日いろいろなことに気づけるんです。現場を知って、スタッフも育てて……って、まるでプロ野球の監督みたいな仕事をしていると自覚しています(笑)。とにかくスタッフ目線で物事を考えるようにはしていますね」
そんな彼が、スタッフを育てるうえで気をつけていること。そして、お客様との付き合いで気にかけていることを聞いてみた。
「スタッフを育てるうえでは、偏見をもたないようにしています。誰にでも何かしら才能があるので、それを引きだしてあげることが私の役目だと思います。また、飲食業界で働く特権は、人との出会いが広がること。だから、スタッフにも人間関係は大事にするように教えています。そしてお客様に関しては、誰かを特別扱いしないようにしています。うちのお店は6割ぐらいがリピーターさんで、それはものすごくありがたいことなんですが、常連の方を特別に扱ってしまうと、一般のお客様がお店に入りづらくなってしまうので危険なんです。だから、どのお客様も基本は一緒。これは鉄則です」
吉澤氏が考える経営三箇条
01 自分の意見をきちんと述べる
02 物事は分かりやすく具体的に伝える
03 相手の立場になって考える
お店としての今後の夢、そして飲食業界の未来に思うこと……
現在もお店の工事が続く中、吉澤氏が考える今後の展望は……。
「まずは今やっている工事を年内中に終えて、2階に温泉をつくること。そして裏にある温泉は、家族風呂として営業するつもりです。さらにロビーには、お土産屋さんをつくって、干物や地元の野菜を売りたいですね。あと、クイックマッサージ屋も併設して、ひとつのアミューズメントパークのようになればと思っています。それから、海外で出店しないか……というお話もいただいているので、それも実現させたいですね」
吉澤氏が海外に拠点を持ちたいと思うのには理由がある。
「日本の飲食業界は、世界一だと私は思っているんです。クオリティしかり、サービス精神しかり……。だから海外で飲食店をやると日本人は尊敬されるんです。でも、残念ながら日本では社会的にそんなにすごいとは思ってもらえないのが現状で、とても残念なところですよね。若いスタッフたちが飲食の仕事に誇りを持ってもらえるためにも、せめて待遇面はよくするようにしています。年に1回、まるまる1ヶ月の休暇をあげたりして。僕自身はまったく休めてはいませんけど(笑)。働いていて楽しいのはもちろん、プライドを持つことは大事ですからね。また、自分の頭を使うのも大事。頭を使って物事を具体的に考えれば、ちょっとした仕事に影響を与えて、大きな成果をあげられるんです。それが最終的にいいお店づくりにつながるんだと、私は思います」
こ十数年もの間、ろくに自由な休みがとれていないという吉澤氏のプライベートの夢を最後に語ってもらった。 「私は実は、子供みたいな遊びに長けていて、釣りなんかが大好きなんです。だから、どっぷりと釣りをやりたい! 海と山のスポーツをやって、アクティブにいきたいですね。湘南の男ですから(笑)」
Restaurant MAIN
住 所:神奈川県鎌倉市稲村ガ崎1-16-13
電 話:0467-24-0235
時 間:11:00~23:00(L.O.22:00)
休 日:年中無休
交 通:江ノ島電鉄「稲村ヶ崎駅」より徒歩5分
文:安藤 陽子 写真:ボクダ 茂
2017年08月17日 掲載